
記事掲載日:2026/9/28
2027年春、東京港の物流拠点に国内最大級の「海の森水素ステーション」が誕生します。このプロジェクトは、 株式会社上組、トヨタL&F東京株式会社、株式会社エスケイエムの3社が連携し、燃料電池フォークリフト(FCFL)及び 燃料電池車両(FCV)へ水素を充填することができる国内初のマルチ型水素ステーションを目指して建設されます。 物流業界の脱炭素化と効率化を加速させる次世代インフラについて、同ステーションを運営する、合同会社海の森水素ステーションの代表職務執行者の下西正時さん(株式会社上組)と 職務執行者の鈴木伸佳さん(トヨタL&F東京株式会社)、加藤祥文さん(株式会社エスケイエム)にお話をお伺いしました。(インタビューライター 生木卓)

左から合同会社海の森水素ステーション 鈴木伸佳さま、下西正時さま、加藤祥文さま
下西さま:東京都江東区にある上組の東京多目的物流センター内に、導入予定のFCFLや東京都が推奨しているFCトラック、FCバスやFCタクシーといったFCVなどに向けて、水素を供給・販売する大型のマルチ型水素ステーションになります。
鈴木さま:現在、同物流センターでは約70台のEVバッテリー式のフォークリフトが、24時間体制で稼働しています。これらを燃料電池式(FC)に切り替えていくことに加えて、物流センターには一日あたり約150台の大型車両が出入りしており、それらの燃料電池化にも対応していくために、国内最大級の規模になる予定です。

鈴木さま:現在、全国で利用されているフォークリフトの内、約7割がEVバッテリー式となっています。EVバッテリー式の最大の難点は、フル充電の状態にするためには最大約8時間の充電時間が掛かってしまうところです。その点、燃料電池式であればエンプティの状態からでも約3分でフル充填することができます。1台あたりの稼働率を上げることができるため、フォークリフトの台数の適正化にもつながります。
加藤さま:加えて水素は国の政策でも、「カーボンニュートラルの実現に不可欠なエネルギー」と位置づけられています。燃料電池式のフォークリフトの普及は、各方面からも期待されています。
下西さま:現在、水素ステーションの建設・運用には、多額の費用が必要です。全国的に見てもこれだけ大規模な水素ステーションは初めての取り組みということで、国や地域の協力は欠かせないと考えていました。実際に国や東京都の担当者の方にも現地に足を運んでいただき、私たちの計画を丁寧に説明しました。最終的には「国のカーボンニュートラルを推進するためのいい取り組みである」ということを認めてもらうことができました。

加藤さま:私たちはこれまでにもエスケイエムの親会社である豊田自動織機の工場内を中心に、フォークリフト用の水素ステーションを運営してきました。しかし、それらはあくまでも工場内で利用するフォークリフト専用という位置づけですので、海の森水素ステーションとは規模が大きく異なります。たとえば車両の燃料タンクの大きさにしても、フォークリフトと大型車では約50倍のサイズの違いがあります。大きくなることで充填にも時間が掛かりますので、これを効率化するために高速タイプのツインノズル方式を採用しました。さらに24時間365日水素を供給するために、東邦ガスエナジーエンジニアリングさんには、シミュレーションをもとに配管や貯蔵方法といった仕組みで設計してもらっているところです。
下西さま:これまで燃料電池を使った車両は、特定の分野での普及に留まっているところがありましたが、この施設をきっかけに燃料電池の利用に興味を持つ企業が増えればと期待しています。また今後は、上組の全国の港湾の事業所にもこの取り組みが展開できるのではないかと期待しています。
鈴木さま:実はすでに、さまざまな業界の方から関心をいただいています。トヨタL&F東京においても北海道から沖縄まで拠点がありますので、この施設をきっかけに普及していければと考えています。
加藤さま:今回、国内最大級の水素ステーションの運営に携わらせていただくことで、エスケイエムにもさらなる施設運営・維持管理の知見が深まっていくことは確実です。現在、全国にある水素ステーションは、多くの課題を抱えています。それらに対して私たちがこれからの経験で得られるソリューションは、既存の水素ステーションの運営やこれからの市場拡大のお役に立てることは間違いないでしょう。

下西さま:世界全体がカーボンニュートラルに向かう中、東京都も「東京港カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画2.0」を策定し、港湾全体の脱炭素化を目指して積極的に動いています。まずは東京から始まるこの動きが、いずれは全国に広がり、国と地域と企業が一体となっていくための第一歩として、「海の森水素ステーション」にご注目ください。

(出典)海の森水素ステーション完成予想図 上組さまホームページ 共同運営会社による水素ステーション建設のお知らせより抜粋
≪水素ステーション概要≫
名称/海の森水素ステーション
設置場所/東京都江東区海の森1-3-4 上組東京多目的物流センター内
運営開始/2027年4月(予定)
敷地/約2200㎡
水素充填可能圧力/45MPa、82MPa
水素供給方式/オフサイト方式
水素供給能力/500N㎥/h超 (大規模)
≪取材協力≫
合同会社海の森水素ステーションさま