工場の「熱ロス」見える化がもたらす変革!コスト削減と脱炭素を両立する製造現場のイノベーション|TOHOBIZNEX

工場の「熱ロス」見える化がもたらす変革!コスト削減と脱炭素を両立する製造現場のイノベーション

記事掲載日:2026/5/28

多くの製造業において、「省エネ」や「カーボンニュートラルの推進」を進める際、 真っ先に検討されるのが高効率なボイラへの更新や、最新の省エネ設備への切り替えといった「インフラ設備の置き換え(設備更新)」です。

もちろん、経年劣化した設備を最新の高効率設備へ更新することは、工場全体のエネルギー効率のベースラインを底上げするために極めて有効な手段です。 しかし、それだけでは、本来得られるはずのポテンシャルを半分しか引き出せていない可能性があります。

高い削減効果を生み出す鍵は、「最新設備への更新」と「適切な運用の見直し」を掛け合わせることにあります。

どれほど高性能なボイラや工業炉を導入しても、それを動かす「生産ラインの操業管理」に無駄が多いままであれば、設備は本来の省エネ性能を十分発揮できません。 設備更新と同時に運用の最適化を進めることで、相乗効果が生まれ、エネルギー効率の向上とさらなる製造原価の低減が可能になります。

外部環境の不確実性が高まる現代の製造業において、目指すべきは「最新のハードウェア」と「最適な運用」が連動した生産体制の構築です。

本コラムでは、食品、化学、金属・表面処理といった「熱需要が多い業種」の工場の目に見えにくい「熱エネルギー」の使用側の可視化と、その効果について解説します。

なぜ「電気」ではなく「熱」の見える化なのか?

製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)において、スマートメーターを用いた「電気の見える化」はすでに広く浸透しています。 しかし、「熱(蒸気、熱風、炉の保熱など)」の見える化にまで踏み込めている工場は多くありません。

電気は「使った瞬間に消費される」ためデータ化が容易ですが、熱は「配管から放熱する」「釜や炉に蓄熱される」「製品に移動する」といった複雑な挙動を示すため、 計測や管理に技術力が必要となります。

しかし、熱需要の多い工場におけるエネルギー消費の主役は、まさにこの「熱」にあります。 どれだけ高効率な設備を導入しても、熱の「使われ方」がブラックボックスのままでは、真の最適化は達成できません。 熱ロスを見直すことこそが、劇的な改善余地を切り拓く鍵となります。

工場に潜む「3つの非生産時熱ロス」

設備更新によって「稼働中」の効率が上がったとしても、製品を製造していない時間(非生産時間)に熱エネルギーが浪費されていれば、 トータルの削減効果は相殺されてしまいます。運用の見直しにおいて、まず把握すべきは以下の「3つの非生産時熱ロス」です。

① 「固定エネルギー」の罠

工場は、製品を1個も作っていなくても、蒸気ボイラを一定の圧力に保つため、あるいは工業炉を一定の温度に維持(保熱) するためにエネルギーを消費し続けます。これを「固定エネルギー」と呼びます。
最新設備であっても、生産ラインが停止している時間が長ければ、製品を生まない無駄な固定エネルギーの比率が高まり、 製品1個あたりのエネルギー効率(原単位)は悪化します。

② 「段取り替え・品種切り替え」に伴う熱ロス

多品種少量生産を行う食品や化学の工場では、Aという製品からBという製品へ切り替える際、設備の「洗浄」や「昇温(温度を上げる)」 「降温(温度を下げる)」が発生します。この切り替え時間中に消費される熱エネルギーは、 製品の価値を生まない100%のロスであり、運用の最適化によって最も削減しやすいポイントです。

③ 組織の分断による「見えないロス」

多くの工場では、エネルギーデータを管轄する「総務・施設管理部門」と、日々の生産スケジュールを組む「製造・生産管理部門」が分断されています。 そのため、最新設備を導入したにもかかわらず、「今週はなぜこんなにエネルギー消費が多いのか」という課題の原因が、 生産計画の乱れ(運用の不備)にあることに誰も気づけないという、構造的な問題を抱えています。

東邦ガスのソリューションで実現する「全体最適」へのプロセス

これらの見えない熱ロスを改善し、ハード(設備更新)とソフト(運用改善)を噛み合わせるための具体的なステップとして、 東邦ガスが提供する専門的なアプローチが力を発揮します。

ステップ①:まずはプロの目で「熱ロス」を炙り出す「熱ロス診断サービス」

運用の改善を始めるにも、工場のどこから、どれだけの熱が漏れ出しているかが分からなければ計画が立ちません。 東邦ガスの診断サービスでは、専門スタッフがサーモビューアカメラやトラップ診断機を用いて現場を調査。 ボイラから配管、消費設備にいたるまでのエネルギー損失額を数値化・レポート化し、まずは「現状のどこに無駄があるか」を解明にします。

ステップ②:生産データと重ね合わせる「工場の見える化サービス」

無駄の箇所が特定されたら、次に行うのが時間軸での可視化です。東邦ガスの「工場の見える化サービス」は、 都市ガス・電気に加え、測定が難しい「蒸気」や「エア」のリアルタイム計測にも対応。 電源不要の電池式計測器や無線通信を活用するため、工場内の複雑な場所にも低コスト・短工期で導入が可能です。

クラウドに蓄積された1分・1時間単位のデータと、実際の「生産計画(MES)」を重ね合わせることで、 「設備起動や加温開始のタイミングが本当に適切か」「段取り替え時にどれだけの熱が捨てられているか」という、運用の課題を浮き彫りにします。

ステップ③:製品別の原価と環境価値を管理する「GreenConnex(グリコネ)」

さらに一歩進んだ経営管理として、CO2排出量を見える化するサービス「GreenConnex(グリコネ)」の活用が有効です。 グリコネを使えば、工場全体のエネルギー把握に留まらず、「設備単位」「時間単位」、そして「製品単位」でScope 1, 2のCO2排出量やエネルギー使用量をリアルタイムに実測値で蓄積できます。
これにより、同一製品を生産する設備の中で「どの運用が最もエネルギー効率が良いか」の特定や、 サプライチェーンから求められる製品ごとのカーボンフットプリント(CFP)の算定・削減に直接貢献します。

「生産計画最適化」がもたらすブレイクスルーの成果

東邦ガスの見える化ツールを使い、生産計画を最適化することで、工場には以下のような効果が期待できます。

成果①:ロットサイズの最適化による「生産密度の向上」

グリコネ等で「品種切り替え時の熱ロス・CO2」を製品ごとに可視化することで、切り替え頻度を抑えるような最適な生産計画の組み替えが可能になります。 設備がアイドリング(無駄に待機)している時間を極小化でき、稼働時間あたりの「生産密度」が上がることで、新設備の持つ省エネポテンシャルを極限まで引き出すことができます。

成果②:稼働時間の集約・ミニマム化による「計画停止」の合理的な判断

注文に合わせて「1日中ラインを動かす(または稼働が薄い状態で待機させる)」よりも、生産計画を緻密に組み替えて「生産時間を1箇所にギュッと凝縮し、 非生産時間を生み出す」ことで、トータルの熱ロスを削減できます。

例えば、「生産計画の効率化によって毎日ラインを1時間早く停止させる」、あるいは「昼休みの時間帯に設備を一時停止、 または省エネモード(保熱温度を下げる等)にシフトする」といった運用改善です。

ボイラや炉、加熱設備の特性を東邦ガスの見える化ツールでデータ化していれば、 「一度温度を下げて再立ち上げ(昇温)にかかる熱量」と「そのままアイドリング状態で温度を維持(保熱)する熱量」のどちらがトータルで得かを天秤にかけ、 最もエネルギー消費の少ない「最適な操業パターン」を論理的に導き出すことができます。

まとめ:ハードとソフトの両輪で進める「攻めの省エネ」へ

これからの製造業におけるエネルギー管理は、単に「最新設備を入れて終わり」にするのではなく、 「設備更新の効果を最大化するために、生産計画(運用)をコントロールする」という、ハードとソフトの両輪でのアプローチが不可欠です。

東邦ガスが提供する「熱ロス診断サービス」「工場の見える化」「GreenConnex(グリコネ)」は、 そのための強力なナビゲーター(羅針盤)となります。現場の「納期・品質」という最優先事項を前提としつつ、見える化し共有することで、 製造部門と施設管理部門が一体となった「全体最適」のカイゼン活動が可能になります。

現在の運用にどれだけの「隠れた熱ロス」があるのか。まずは、現在の生産データとエネルギーデータを重ね合わせることから始めてみてはいかがでしょうか。

<<監修>>
  • 東邦ガスエナジーエンジニアリング株式会社 ビジネス開発部
  • 主席CNコンサルタント 小野太志
  •  
  • 工場DX推進プロフェッショナル。企業のカーボンニュートラル(CN)達成に向けた「現状のCO2排出量やエネルギーロスの正しい把握(見える化)」 から始める伴走型コンサルティングを得意とする。データに基づく的確な診断と、現場の状況に寄り添った「現場力向上」のための具体的な改善アドバイスに定評があり、 企業の光熱費・燃料費低減、および自社の競争力強化につながる「価値創造の省エネ」のノウハウを発信している。