ブラジル・ベレンで開催された「COP30」とは?わかりやすく解説します。|TOHOBIZNEX

ブラジル・ベレンで開催された「COP30」とは?わかりやすく解説します。

記事掲載日:2026/5/8

気候変動という地球規模の課題に対し、国境を越えた「共通のルール」を定める国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP)。 パリ協定採択から10年、京都議定書の発効から20年という節目にブラジルのベレンで開催された第30回の会議「COP30」。本記事では、1.5℃目標の達成に向けた各国目標(NDC)の進展や、「気候資金」の枠組み、 そして議長国ブラジルが掲げた「ムチラオ」まで、COP30の主要トピックをわかりやすく解説します。(ライター南由美子/nameken)

190以上の国が集う「気候変動COP」の仕組みとは?

COPとは「Conference of the Parties」の略で、「締約国会議」を意味します。 生物多様性や干ばつによる砂漠化防止のための国際条約に関わる会議などがある中、よく耳にするのは気候変動のCOPでしょう。

気候変動枠組条約は、地球温暖化による悪影響を防止するため、温室効果ガスを安定化させることを目的に1992年、国連で採択されました。 締約国には温室効果ガス削減の計画策定と実行、排出量実績の公表などが求められています。 しかし、具体的な枠組みの進め方は記されておらず、その行動計画や目標を設定する場として約190の条約締約国・機関によるCOPが設けられました。

コロナ禍で延期された2020年を除き、毎年10~12月頃に約2週間にわたって開催。各国政府・機関の関係者が議長国の都市に集まり、 気候変動や地球温暖化を軸にさまざまなテーマで話し合い、最終日に合意文書が作成されます。

1997年に日本の京都で開かれたCOP3では「京都議定書」が採択され、初めて温室効果ガス排出量削減について法的拘束力のある数値目標が設定されました。 ただし、義務の対象は先進国のみで、地球環境問題への寄与と解決能力に差があるという「共通だが差異ある責任」の原則に基づき、削減義務の対象は先進国のみに限定されました。

焦点は「資金」と「目標」:ブラジル・ベレン会議の全容

COP30は2025年11月10日から22日までブラジルのベレンで開かれ、約190の国・機関が参加。これまでの成果を踏まえた具体的な行動の促進が期待され、以下のような議論が焦点となりました。

なお、気候変動対策には温室効果ガスの排出量を削減する「緩和」と、すでに起きている、あるいは予測される被害を軽減させる「適応」があり、両輪で取り組むことが重要といわれています。

●パリ協定10周年を踏まえた緩和の取り組みの進展

パリ協定では、締約国は5年ごとに温室効果ガスの排出削減目標「NDC」、2年ごとにその取り組みを報告する「BTR(隔年透明性報告書)」を提出することが義務付けられています。 これをもとに世界全体の取り組み状況を評価・検証する「GST(グローバル・ストックテイク)」を5年ごとに実施し、結果を踏まえて各国に目標の引き上げを促します。 COP28で初めてGSTの結果が示され、COP30では2025年2月が提出期限のNDCでどれくらい目標に近づけるかが注目されていました。 しかし、提出が遅れる国が後を絶たず、期限を延期しましたがCOP30開催時点でも約4割が未提出でした。

●適応に関する指標の確定

COP28で設置された「GGA(適応に関する世界全体の目標)」の進捗を測定する指標を策定するための「UAE-ベレン作業計画」を完了させ、 適応の実施と支援強化に向けたグローバル指標の確定が目指されました。

●気候資金の具体化

COP29で決定された「NCQG(気候資金に関する新規合同数値目標)」を踏まえ、気候変動対策に必要な資金支援について議論されました。 COP29では途上国向けの対策資金として2035年までに少なくとも年間3000億ドルの拠出、 公的・民間資金を合わせて少なくとも年間1兆3000億ドルまでの増額が求められ、COP30議長国のブラジルは開催前から資金協力を強調していました。

COP30「グローバル・ムチラオ決定」の採択

こうした議論を取りまとめるため、COP30ではポルトガル語で共同作業や協働を意味する「ムチラオ」がテーマに掲げられました。 世界が分断される中で「協働の精神」を持って気候変動対策を進めようという議長国からの呼び掛けです。

その成果もあってか、会期は予定より1日延長されましたが、最終的に主要議題の決定をまとめた「ベレン・ポリティカル・パッケージ」が発表され、 その中で特に関心の高い事項を取り上げた「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。

その決定は「緩和」「気候資金」「気候変動に関する一方的な貿易制限的措置」などから成り立っています。

緩和についてはNDC未提出のパリ協定締約国に対し、できるだけ早期の提出を促す文言が盛り込まれました。 パリ協定の1.5度目標を達成するためには、各国が排出する温室効果ガスを2035年に60%減(2019年比)にしなければなりませんが、今回提出された各国のNDCでは合計でまだ12%減にとどまっていたからです。

気候資金については、適応策に対する資金支援を2035年までに3倍(2025年水準比)に増やす「努力」が呼び掛けられました。

貿易については国際協力の強化や課題の検討などが決定され、2028年に会合を行うことになりました。 たとえばEUが導入を進める「CBAM(炭素国境調整措置)」は、EU域外の製品に域内と同様の炭素価格を課す仕組みで、途上国側には貿易障壁となります。 気候変動枠組条約では気候変動対策が国際貿易を不当に制限してはならないと定められ、途上国側はこうした一方的な貿易制限についての議論を求めてきましたが、今回の決定でその機会は先送りされたともいえます。

「損失と被害基金」や「公正な移行メカニズム」でも進展

ムチラオ決定以外では、COP27で設立が決定し、初期の資金調達が行われている「損失と被害基金」の運用方法が確認され、社会実装に一歩近づきました。

これは緩和策や適応策では間に合わず、すでに気象被害を受けている国・地域を支えるための基金で、日本やアイスランド、ルクセンブルクなどが資金提供を誓約しています。 公的資金だけでなく、民間投資を呼び込む制度設計が加速しており、ESG投資がさらに気候リスクを数値化し、資本市場に反映させる方向に進むことを産業界も留意すべきでしょう。

このほか、公平性を気候変動対策の中心に据える「公正な移行メカニズム」がベレン・ポリティカル・パッケージの中で採択され、2026年に具体的な枠組みを検討することになりました。

公正な移行とは、社会・経済構造の変化に誰一人取り残されないようにすることで、カーボンニュートラル社会への移行では取り残された企業・労働者が倒産・失業するのを避けることが重要とされます。 今回は移行プロセスに伴う人権問題にこれまでより踏み込んだ合意がなされたとして、評価する声が上がっています。

「化石燃料からの脱却」などは合意形成できず

一方、期待されていた「化石燃料からの脱却」や「森林破壊停止のロードマップ」への言及は最終決定文書から削除されました。

化石燃料からの脱却はCOP28で「今後10年間で行動を加速させる」と文書に盛り込まれ、COP30では「段階的廃止」に踏み込むと注目されていましたが、 主要産油国などの反対で合意形成が難しかったとみられます。「2年前の合意から後退した」という報道も出ました。

森林破壊の歯止めについても、アマゾン川の河口が会場となった今回、特に注目されましたが、本質的な議論は展開されませんでした。

ただし、議長国ブラジルは開幕直前に「国際熱帯林保護基金」を設立。熱帯雨林保全への投資のため、政府などの公的資金で250億ドルを調達し、 それを呼び水に民間から1000億ドルを募ると打ち出しました。 ブラジルのほかインドネシアやノルウェーなどの政府が拠出を表明。森林破壊停止のロードマップも検討を続けていくため、COP31で再登場する可能性があります。

「ベレン持続可能燃料4倍宣言」の提案。2035年までに4倍へ

日本とブラジル、イタリアは「ベレン持続可能燃料4倍宣言」を共同で提案しました。 水素、バイオ燃料、合成燃料といった持続可能な燃料の生産と利用を2035年までに4倍にするという世界的目標で、特に航空、海運、鉄鋼、セメントなど、脱炭素化が難しい産業での需要拡大を見込んでいます。 2025年11月14日時点で23カ国が参加を表明し、今後も賛同国を募っていくそうです。

日本は持続可能燃料の活用をカーボンニュートラルへの道筋の一つとしており、この宣言の目標達成に向けて積極的に取り組んでいく方針。 特に道路交通分野ではバイオ燃料などの持続可能燃料とハイブリッドエンジンとの組み合わせを重視しています。

日本政府代表も参加し、2050年にネットゼロを目指す姿勢をあらためて示しました。宣言に基づきバイオ燃料や新技術への投資を行う方針で、 GX対策費も含めて脱炭素支援施策は今後も手厚くなっていくと予想されます。 企業はこうした流れに乗ってカーボンニュートラルを進めると、さまざまなビジネスチャンスが得られる可能性があります。

一方で、気温上昇を1.5℃以内に抑えるために許容されるCO2排出量は残りわずか数年分との見通しがあるほか、 今回初めて公式に「1.5℃目標を一時的に超過(オーバーシュート)する可能性」が示され、世界的な排出削減の加速は待ったなしです。 企業は政府による規制強化、資金調達条件の変化、公正な移行の実現、サプライチェーン規制の厳格化など、企業は一層の対応を求められるでしょう。

ただし、国際情勢は予断を許さない状況にあります。第2次トランプ政権下のアメリカは2026年1月27日、パリ協定から正式に離脱。 さらに、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)そのものからの離脱も表明しており、かつてない混迷を極めています。企業にはより強靭な脱炭素戦略が不可欠となっています。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」のプロ(メディア)会員。

参考

経済産業省 資源エネルギー庁
あらためて知りたい、「COP(コップ)」とは?いったい何を話しあっているの?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/what_is_cop.html

独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
COPってどんな会議?2024年のCOPの焦点についても解説!
https://www.jogmec.go.jp/publish/plus_vol24.html

環境省 脱炭素ポータル
気候変動COP30@ブラジル・ベレンの展望 ~日本の脱炭素や気候変動適応の取組を世界に発信~
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20251107-topic-81.html

環境省 脱炭素ポータル
気候変動COP30@ブラジル・ベレン 結果概要 ~交渉の結果と日本の取組発信~
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20260121-topic-83.html?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=CN-Mailmagazine-Monthly-202601&utm_id=CN-Mailmagazine-Monthly-202601&utm_content=1

外務省
国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(結果)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/pagew_000001_02153.html

環境省
UNFCCC COP29の報告とその後の状況
https://jprsi.go.jp/files/activity/r6_seminar5_report_01.pdf

WWFジャパン
COP30結果報告
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/6159.html

認定特定非営利活動法人 FoE Japan
COP30総括:「協働」の努力は実を結んだのか?国際協調がかろうじて守られたCOP
https://foejapan.org/issue/20251225/27440/

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
COP30の最終合意文書、脱化石燃料には至らずも資金調達と持続可能燃料の利用促進で前進
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/bfa2b30270a9a06c.html

経済産業省 資源エネルギー庁
「COP30」で日本の脱炭素技術を世界に発信!持続可能燃料の共同宣言にも注目
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cop30.html

環境省
国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)、京都議定書第20回締約国会合(CMP20)及びパリ協定第7回締約国会合(CMA7)が開催されました
https://www.env.go.jp/press/press_01793.html

日本バルブ工業会
COP30ブラジル開催:気候資金・自然資金・野心
https://j-valve.or.jp/env-info/18371/

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
日本、COP30で脱炭素化と経済成長推進の両輪を目指すことを強調
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/9d6130188aaee929.html

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