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部下が「自分で答えを出せない」とき、デキる上司がひそかにやっていること

伊庭正康: 株式会社らしさラボ代表取締役

記事掲載日:2026/4/27

プレーヤーとして優秀な成績を収めていたのに、部下を束ねるマネジャーとしてはなかなか成果が出せない――こんなケースがよくあります。 なぜ優秀なプレーヤーが、優秀な上司になれないのか。 この問題の背景には、上司としての「思考の切り替え」ができていないことがあります。(らしさラボ代表取締役 伊庭正康)

※本記事は「ダイヤモンド・オンライン」より提供を受けて掲載しています。

自分で成果を出す力と
チームとして成果を出す力は別物

「プレーヤーとしては抜群なのに、マネジャーとしてはいまひとつ成果が出ない」――。

 そんな声を現場で耳にすることがよくあります。 例えば、営業成績が毎月トップだった人が課長に昇進したところ、チームの成果が伸び悩み、悩みを深めている。これは決して珍しい話ではありません。

 本人の能力は高い。経験も豊富。努力家でもある。にもかかわらず、部下を束ねるマネジメントの場になると、なぜか思うようにいかない。

 それは、「本人が成果を出す力」と「部下に成果を出させる力」加えて、「チームとして成果を出す力」はまったく別の能力だからです。

 優秀なプレーヤーほど、自分のやり方こそ正解だと信じている人が多いもの。なぜなら、そのやり方で成功してきたからです。

 その成功体験は、間違いなく本人の財産です。しかし、そのやり方をそのまま部下に押しつけてしまうと、むしろ逆効果になることが多いのです。

 例えば、部下に対して「こうやればいいよ」「まずはこれからやってみて」とすぐに助言をしてしまう。これは一見、親切のように見えて、実は部下から“考える機会”を奪う行為です。

 人が最もやる気を出す瞬間は、「自分で決めた」と感じたときです。これを心理学では「自己決定感」といいます。 指示されて動いたときよりも、自ら考え、選び、決めたときのほうが、人は主体的に行動し、粘り強く成果を出そうとします。

 ところが、上司がすぐに正解を教えてしまうと、部下は「自分で考えなくていい」と思い込みます。 さらに言うなら、「上司の言うことを聞かないといけない(=やらされ感)」につながります。次第に、行動力も責任感も薄れていくでしょう。これでは、成長機会を奪うことにもなりかねません。

答えを教えるのではなく
「考えさせる」

 では、どうすればよいのでしょうか。マネジャーに求められるのは、「教えること」ではなく、「考えさせること」です。

 例えば、部下が壁にぶつかっているとします。そんなとき、「それならこうすれば?」とアドバイスするのではなく、まずはこう聞いてみてください。

「今、どうしたらいいと思う?」
「どこでつまずいてると思う?」

 そう、問いかけるのです。問いかけることで「考えさせる」ことができるからです。

 部下が自分の頭で状況を整理し、答えを出そうとするプロセスを尊重する、これができる管理職が押さえておくべき鉄則です。

 それでも答えが出ない場合もあるでしょう。でも、まだ答えを言いません。ヒントを与える形でこう伝えます。

「例えば、●●の観点で考えるとどうなるだろう?」

 これで視点をずらすことができます。どうしても自力で答えを出せないときだけ、最後の手段として「●●をしてみるのはどうかな?」と提案する。 あくまで最後の手段。こうした順序を守ることで、部下は「考える力」と「自分で決める感覚」の両方を養うことができます。

チームの強さは“相乗効果”
「週1回の5分」で変わる

 プレーヤーとして優秀だった人ほど、「個人の能力さえ高めれば、チーム全体の成果も上がる」と信じがちです。しかし、これは大きな誤解です。 なぜなら、チームの強さとは“個の和”ではなく、“相乗効果”によって生まれるものだからです。

 個々がいくら優秀でも、情報共有がなされていなければ、同じ失敗が繰り返されたり、非効率な手法が続いたりします。 結果として、チーム全体の成果が頭打ちになるのです。

 実際、優秀な選手が揃えっていても優勝できないスポーツチームもありますよね。まさに、このパターン。チームが機能していないのです。

 強いチームには「ナレッジの共有文化」があります。成功事例や失敗事例、日々の工夫をメンバー同士が気軽に共有しあえる環境が整っているのです。

 では、どうすればナレッジがチーム全体に広がるのか。その鍵は、ミーティングの中身を変えることです。

 多くのチームで行われている進捗報告だけの会議は、事務的になりがちです。もちろん進捗の把握は必要ですが、それだけではチームは強くなりません。

 例えば、週1回のミーティングで「成功の種明かしをしよう!」という時間を5分設けるだけでも、ナレッジは自然に集まります。 また、「こんな失敗をしたが、こう改善した」という話が共有されれば、他のメンバーのリスク回避にもつながります。

 ナレッジ共有の場では、上司が「教える」立場ではなく、みんなの声を「聞く」立場でいることも重要です。 部下が自然に語れるよう、心理的安全性を担保しながら進行することが、マネジャーの腕の見せ所です。

上司に必要なのは
“問いかける力”である

 結局のところ、優秀なプレーヤーが優秀な上司になるためには、「思考のスイッチの切り替え」が求められます。

・すぐに答えを言わない
・まずは「考えさせる」対話を心がける
・自己決定感を大事にする
・ナレッジを共有する場を設ける
・個ではなく、チームの総合力を高める発想を持つ

 マネジメントとは、「自分が動くこと」ではなく、「人が動くように支援すること」。そのために必要なのは、教える力ではなく、問いかける力です。

 あなたの問いかけが、部下の思考を促し、やる気に火をつけ、チームを変える第一歩になるかもしれません。

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