
記事掲載日:2026/3/25
持続可能な街づくりに欠かせない「地域冷暖房」。
一つのプラントから複数の建物に熱(冷水・温水・蒸気)を供給するこの仕組みは、省エネやコスト削減に加え、災害時の強靭性(レジリエンス)にも優れています。
東海エリアでは名駅エリアや栄エリアを中心に広く導入されており、都市部の再開発には欠かせない仕組みの一つです。
今回は地域冷暖房のメリットや将来の展望について、東邦ガスエナジーエンジニアリング株式会社 都市エネルギー営業第一部の半田大祐さんにお話をお伺いしました。(インタビューライター 生木卓)

東邦ガスエナジーエンジニアリング 都市エネルギー営業第一部 半田大祐さん
「地域冷暖房」とは、一つのエネルギープラントでつくった冷水や温水・蒸気を、地域導管(配管)を通じて近隣の複数のビルや建物に供給して冷暖房や給湯を行う、 「省エネルギーシステム」の名称です。従来、建物ごとに熱源設備を持ち冷暖房や給湯を行っているものを共有のエネルギープラントに集約することで、さまざまなメリットが生まれます。 一般の方には聞き慣れない言葉かもしれませんが、東京、横浜、札幌、大阪、名古屋、福岡などの都市部やランドマークと呼ばれる建物、商業施設などで採用されており、日本全国に広く普及しています。
大きく3つのメリットがあります。
まずは「省エネルギー」について。複数の建物の負荷を集約することで負荷の平準化や設備の高効率稼働が実現できます。 その上で再生可能エネルギーや未利用エネルギーを有効活用することにより、さらなるエネルギー消費の低減も図れます。
次に「省コスト」について。エネルギーに特化した専門の事業者がプラントを管理・更新していくため、個別の建物で設備を持つよりも、先進的なシステムを導入しやすくなります。 また、人員を集約できるため管理コストが下がります。各建物に空調設備を置く必要がない分、地下などのスペースの有効活用が可能です。また、地域や条件によっては、容積率の緩和を受けることができます。
最後に「防災面」です。地域冷暖房は、地震などの災害に強い施設・設備・技術・監視体制を有しているエネルギーインフラです。 プラントは高い耐震設計を求められます。たとえば2011年の東日本大震災においても、地域冷暖房の熱供給施設はほとんど被害がありませんでした。 また2018年の北海道胆振東部地震で大規模停電が起きた際にも、札幌市の地域冷暖房のある地区では、天然ガスコージェネレーションシステム※が稼働し電力と熱を供給し、帰宅困難者を受け入れるなど地域に貢献した事例があります。
※天然ガスコージェネレーションシステム(CGS)とは:
天然ガスを燃料に発電し、その際に発生する廃熱を冷暖房や給湯に有効活用するシステムのこと。エネルギー効率が非常に高いのが特徴です。
https://biznex.tohogas.co.jp/article?articleId=SV00273
日本で最初の地域冷暖房は、1970年の大阪万博の際に大阪の千里中央エリアで導入されたものになります。
東海地方では、1980年代に名古屋市内で普及が始まりました。現在では、名駅エリアや栄エリアなどを中心に15か所以上の地域で地域冷暖房が導入されています。
東邦ガスグループとしては、1990年に中区の栄ガスビル周辺地域への供給から始まり、最近ではみなとアクルスなどでも地域冷暖房により、地域に熱と電気などを供給しています。

名古屋錦三丁目地域の地域冷暖房プラント設備(貫流ボイラ)

名古屋錦三丁目地域の地域冷暖房プラント設備(中水熱回収ヒートポンプ)
地域冷暖房は、エネルギーを効率的に活用できる仕組みです。カーボンニュートラルやエネルギーの効率的な利用が重要視される中、 その実現に大きく寄与することができる仕組みだと考えています。また南海トラフ巨大地震など自然災害が危惧される中、地域の防災性の向上にも取り組んでいます。 例えば、名古屋市港区の「みなとアクルス」の地域冷暖房は、天然ガスコージェネレーションシステムを備えており、 停電時などにも隣接する港区役所に電力を供給できる仕組みを備えています。災害時には災害拠点としての機能を維持できるよう防災性の向上に寄与しています。

最近では栄エリアの再開発でも導入され、地域冷暖房は街づくりに欠かせないインフラとなっています。「東海地方の皆さまの生活に地域冷暖房でも貢献していきたい。」という思いでこれからも取り組んでまいります。
※「ザ・ランドマーク名古屋栄」の地下4階に「錦三丁目地域エネルギーセンター」を竣工し、2026年4月1日から同ビルへの熱供給を開始します。
https://www.tohogas.co.jp/corporate-n/press/1257623_1342.html

