
記事掲載日:2026/1/20
航空宇宙・自動車・医療分野を支える高強度なボルト製造で知られるメイラ株式会社。同社は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、 製造工程で最もCO2の排出量が多い「熱処理」の燃料をLPガスから都市ガスへと切り替えました。 品質維持という課題を乗り越えて実現したこの転換の舞台裏と同社が目指す持続可能なものづくりについて、 環境管理部の西浦修一部長と輌機事業部製造部熱処理課の石原和昭課長にお話を伺いました。(インタビューライター 生木卓)

左から輌機事業部製造部熱処理課課長 石原さま、環境管理部部長 西浦さま
西浦部長:弊社の設立は1936年。航空機用のボルトの製造からスタートしました。現在は「天(航空・宇宙)・地(自動車・一般産業)・人(医療)」の3領域で、 高強度・高品質なボルトや精密機械の部品加工、整形外科分野の骨接合用プレートやスクリューをはじめとしたインプラント製品など、人や社会、未来を「つなぐ」製品の開発、製造を行っています。
石原課長:私たちは高強度ボルトの開発や製造に強みを持っており、特に自動車関係ではエンジンや足回りといった、重要保安部品として使用されています。 また航空・宇宙分野では国産ロケットなどにも採用されています。その一方で最近では業界に先駆け、軽量化製品のアルミボルト製造や熱処理にも取り組んでいます。
西浦部長:起点となったのは2022年に環境方針を改定し、「2050年カーボンニュートラル」を明確に掲げたことです。 社内にプロジェクトを立ち上げ、ロードマップの作成に取り組みました。その中で一番の課題が、弊社のCO2排出量の半分以上を占めている「熱処理」工程の脱炭素化でした。

石原課長:製品に強度と粘り強さを持たせるために、熱処理は欠かせません。製造工程では、硬さを出すための「焼入れ」として860度以上の炉で加熱をした後、いったん急速に冷まします。 その後、さらに粘り強さを出すために、400~600度で再加熱する「焼戻し」を行います。この一連の工程でガスバーナ を使用します。


高精度な製品製造のために欠かせない熱処理設備は多くのエネルギーを使用する
西浦部長:特に自動車業界は脱炭素への取り組みが進んでおり、削減目標を明確にする顧客企業が増えていて、 私たちもスコープ3の観点から削減を求められていますので、それらに応えていく必要があります。
石原課長:LPガスを都市ガスに切り替えることで、CO2の排出量を約12%削減することができます。 また都市ガスでは液体を気化するためのベーパーライザーが不要になるため、その電気代やメンテナンス費もカットすることができるなど、メリットは大きいと考えました。
石原課長:やはり一番の懸念点は、品質への影響でした。LPガスと都市ガスでは熱量が異なるため、炉の中が必要な温度まで上がるかという問題です。 事前に綿密な熱量計算やシミュレーションを行い、理論上大丈夫だという確証を得た上で切り替えに踏み切りました。その上でバーナの部品を交換したり、警報器を取り替えたり、 半年以上前から配管の工事を行ったりと、少しずつ準備を進めていきました。 実際の改造工事については、夏季長期連休時に1週間ほどかけて一気に実施。休み明けに試運転をして、温度分布が「問題ない」と判断できた時は、正直ホッとしましたね。

西浦部長:CO2排出量は明らかに減少しました。コスト面に関しては市況による変動がありますが、これまで使用していた電気代の削減や点検業務の廃止など運用上のメリットもあります。 何より、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて大きく前進したことが一番の成果です。
石原課長:プロジェクトの宣言以来、従業員の省エネ意識も高まったと感じています。エネルギーコストや地球温暖化防止、 自分たちの作業環境を守るという意味でも、やるべきことだという認識が浸透してきました。 常に炉を使っている中でも、「燃料費は固定費ではない」という考えも広がっています。
西浦部長:現在、関工場の都市ガス化も進めています。今後についてはロードマップを中心に、世界情勢やエネルギーコストの変化を見極めながら、 年4回の見直しを行って柔軟に進めていきたいと考えています。燃料問題以外にも、コンプレッサーの排熱を暖房に利用したり、 太陽光パネルの設置など対策を実施してきていますが、今後もあらゆる省エネ施策やエネルギー転換などを組み合わせて、目標達成を目指したいですね。

