記事掲載日:2025/8/18
日本をはじめ世界各国は2050年から2070年代のカーボンニュートラル達成を目指して取り組みを進めています。 しかし、その内容や状況はさまざまです。今回は前編と後編に分けて、カーボンニュートラル実現に向けた国内外の最新の動向を紹介します。(ライター南由美子/nameken)
各国の温室効果ガス排出量の削減に向けての取り組みは、パリ協定の運用が始まった2020年から本格化しています。 同年までに2030年の削減目標を国連に提出した上で、さらに2035年以降の削減目標を2025年2月までに提出することが求められていました。
しかし、2025年3月21日時点で最新の削減目標を提出した国は、加盟195カ国とEUのうち日本、イギリス、カナダ、ウルグアイ、エクアドル、 シンガポール、ジンバブエ、キューバなど18カ国にとどまっています。アメリカはバイデン政権時代に提出しましたが、トランプ政権になってパリ協定そのものからの離脱を表明しています。 (正式な離脱決定は2026年1月の予定)
そうした動向を含めて、現時点で主要国が掲げている温室効果ガス削減目標(NDC)を以下にまとめました。
「2050年カーボンニュートラル」を2020年に宣言。温室効果ガス排出量を2030年度に46%削減(2013年度比)し、 さらに50%削減に向けて挑戦することを2021年に表明しました。2035年度には60%、2040年度に73%削減する目標も2025年に決定しています。
「2050年カーボンニュートラル」を2021年に宣言。バイデン政権時には2030年に50〜52%削減(2005年比)、2035年に61〜66%削減を発表しています。
「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年に40〜45%削減(2005年比)、2035年に45〜50%削減する目標を掲げています。
「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年に少なくとも68%削減(1990年比)、2035年に少なくとも81%削減という目標を掲げています。
「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、 2023年に公表した「国家エネルギー・気候計画」で、2030年に50%削減(1990年比)という目標を掲げています。
EUが「2050年カーボンニュートラル」を目指すなか、ドイツは「2045年カーボンニュートラル」というより高い目標を宣言しています。 2030年に少なくとも65%削減(1990年比)、2040年に少なくとも88%削減という目標です。
2021年に発表した第14次5か年計画で「2060年までにカーボンニュートラル」を実現する目標を掲げています。 2021年に提出した目標は、2030年までに65%削減(2005年比、単位GDP当たりCO2 排出量)し、2030年までにピークを迎えられるよう努めるとしています。

参考)環境省「国内外の最近の動向について」より抜粋
温室効果ガス排出量は2010年代半ばから減少傾向にあり、2023年度の削減実績は約24%(2013年度比)でした。
産業活動や家庭などで消費されるエネルギーの総量である最終エネルギー消費量は、徹底した省エネの取り組みから2000年代半ば以降は減少しています。 一方でDXやGXの進展により電力需要の増加が見込まれるため、さらなる省エネの推進が必要な状況にあります。
最終エネルギー消費のうち約3割を電力が占めています。電力部門における非化石電源比率は2011年の東日本大震災後に下落したものの、近年は上昇傾向です。
再生可能エネルギーは2012年からのFIT(再生可能エネルギー固定価格買取)制度の導入で増加。原子力は2025年3月末時点で14基の原子炉が再稼働しています。
温室効果ガス排出量は2000年代後半をピークに減少傾向。2022年時点の排出量削減実績は約17%(2005年比)です。
最終エネルギー消費量は2000年頃から横ばいで推移し、そのうち約2割を電力が占めています。 電力部門における非化石電源比率は2010年頃から増加し、2022年時点で39%でした。
再生可能エネルギーは2010年頃まで10%程度で横ばいでしたが、税額控除などの再生可能エネルギー導入支援によって2010年頃から増加し、2022年は21%に。 原子力の比率は横ばいで推移し、2022年には18%となっています。
バイデン政権は再生可能エネルギーや原子力の導入拡大などに向けた政策を推進。原子力については約30年ぶりに新設の原子炉が2023年7月と2024年4 月に稼働しました。 次世代エネルギーについても「国家クリーン水素戦略」を発表し、クリーン水素製造への税額控除を検討していました。
温室効果ガス排出量は1990年代に増加した後、2000年代以降は横ばいになっており、2022年の排出量削減実績は約8%(2005年比)でした。
最終エネルギー消費量は2000年代前半にかけて増加した後は横ばいで推移。そのうち約2割を電力が占めています。 電力部門における非化石電源比率は2000年前後に一時的に低下したものの、1990年以降は一貫して8割程度と高い水準で、2022年は82%です。
再生可能エネルギーについては水力発電が発電に占める割合が大きいため、 再エネ比率が1990年以降ずっと高い水準で、 2022年時点では69%です。原子力については2000年頃から横ばいで、2022年時点では13%でした。
温室効果ガス排出量は1990年以降、減少傾向にあり、2022年の削減実績は約50%(1990年比)でした。
最終エネルギー消費のうち約2割を電力が占め、電力部門における非化石電源比率は2010年頃から増加し、 2022年に57%でした。これは再生可能エネルギーの電源比率が2010年代から増加したからです。2010年代前半に導入支援策が実施され、 電源比率は2022年に42%まで上昇しました。原子力も2000年代以降、一貫して推進されていますが、 新設が進まない一方で古い原子力発電所の廃炉が進み、原子力の発電比率は2010年頃にかけて減少し、2022年時点では15%となっています。
また、2015年に「今後10年以内に石炭火力発電の使用を終了」が宣言され、 発電全体の約2割以上を占めていた石炭火力の発電量が減少。2024年9月に国内唯一だった石炭火力発電所を運転停止し、全廃されました。
温室効果ガス排出量は1990年頃をピークに減少傾向で、2022年の排出量削減実績は約28%(1990年比)でした。
最終エネルギー消費量は2000年代半ばから減少傾向にあり、そのうち約3割を電力が占めています。 電力部門における非化石電源比率は1990年以降、90%程度と高い水準で推移し、2022年時点で87%でした。
再生可能エネルギーについては導入支援策によって2010年代前半から増加し、2022年には24%となっています。 原子力は以前から比率が高く、老朽化による設備改修などで稼働率が低下したため減少傾向ですが、それでも2022年は63%と、他国と比べて高い水準にあります。
温室効果ガス排出量は1990年頃から減少傾向で、2022年の排出量削減実績は約41%(1990年比)でした。
最終エネルギー消費量は2000年半ばから減少傾向にあり、約2割を電力が占めています。 電力部門における非化石電源比率は2000年代後半から増加し、2022年で50%でした。
再生可能エネルギーは2000年に制定された法律でエネルギー政策の中心に位置づけられ、2000年代以降に増加し、2022年には44%でした。 2002年に「脱・原子力」を法制化し、2023年4月にはすべての原子力発電所の運転が停止しています。
一方で、電力の安定供給のためLNG輸入強化やガス火力発電を活用する動きもあります。
温室効果ガス排出量は増加傾向にあり、2021年の排出量実績は約79%増加(2005年比)しました。
最終エネルギー消費のうち約3割を電力が占め、電力部門における非化石電源比率は2010年頃から増加しており、2022年で35%でした。
再生可能エネルギーと原子力の開発が推進され、2022年には再エネは30%、原子力は5%となり、これらの設備容量の合計は火力発電を上回っています。

参考)資源エネルギー庁「主要10か国・地域のカーボンニュートラル実現に向けた動向とその背景」を一部加工
2025年11月にブラジルで開催予定の「国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)」ではNDCをめぐる議論も想定されていますが、現時点では足並みがそろっているとはいえない状況です。 従来から約13倍に拡大する「気候資金(気候変動対策のため主に先進国が途上国に拠出する資金)」目標などの重大な議題も討議される予定です。
後編では、2025年に公表された国内外の施策と日本のカーボンニュートラルに関わる企業および業界の最新動向について解説します。
環境省 地球環境局
国内外の最近の動向について
https://www.env.go.jp/content/000301471.pdf
経済産業省 資源エネルギー庁
主要10か国・地域のカーボンニュートラル実現に向けた動向とその背景
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2025/pdf/1_3.pdf