【事例5選】学校体育館の空調設置状況は?災害時にも重要な「学校体育館への空調設備」について解説します|TOHOBIZNEX

学校体育館の空調設置状況は?災害時にも重要な「学校体育館への空調設備」について解説します

【事例紹介】学校法人尾張学園さまの体育館への空調設備導入について

記事掲載日:2025/5/16

近年の猛暑の深刻化をきっかけに、公立小中学校の教室では空調設備が整備されてきました。 一方で、学校施設である体育館への導入はあまりすすんでおらず、文部科学省は災害時に避難所ともなる体育館に空調を整備し、 地域の課題に寄り添った防災機能の実装を目指すとし、臨時特例交付金を新設しました。 今回は加速化が見込まれる学校体育館の空調整備について解説します。(ライター南由美子/nameken)

学校空調

学校体育館への空調設置率は2割弱、自治体により大差

猛暑による熱中症などを防ぎ児童生徒の安全を確保するため、 公立小中学校の教室では空調(冷房)設備の設置率は95.7%まで進みました。これに対し、 体育館への設置率は18.9%にとどまっているのが現状です。18.9%といっても自治体によってかなりの差があり、 東京都は88.3%と圧倒的に高いものの、0.4%や0.6%など1%未満の県もあります。

体育館の空調設置率が低い理由は、面積の広さから設置費用やランニングコストの負担が重いことや、 教室と比較して学校活動への影響が少ないことなどが挙げられます。

しかし、体育館も教室と同様に子どもたちの学習の場です。災害時には地域の人々の避難所としての役割を担うところも多くあります。 風水害や大規模地震への懸念が高まるなか、冷房・暖房機能が整備された環境が望ましいといえます。

国は臨時特例交付金を新設して導入の加速化図る

文部科学省は体育館の空調設備設置率の現状を受け、避難所機能の強化に向けて導入を促進しようと2035年度までに95%という目標を掲げました。 これまで体育館への空調設置は「学校施設環境改善交付金」で支援していましたが、2024年度補正予算で必要経費を計上し、 避難所となる学校体育館に特化した2033年度までの「空調設備整備臨時特例交付金」を新設。整備の加速化を図ります。

この臨時特例交付金の対象は、公立の小学校、中学校、特別支援学校などの屋内運動場(学校体育館、武道場)における空調設備の新設およびその関連工事。 補助要件として「避難所に指定されている学校であること」「断熱性が確保されること」を求めており、国の補助率は2分の1です。

断熱性の確保は、空調設備の効果を高め、光熱費を抑制するために重要です。今回の要件は過度な対策を要求するものではなく、屋根に遮熱塗装を施したり、 天井や窓に断熱遮熱効果のあるフィルムを貼ったりするなど、短期間かつ安価な方法も認められます。

文部科学省は学校施設の防災機能の強化・実装に向けた検討会も設置し、自治体に参考となる情報を随時提供していく方針で、 自治体には交付金などを活用して学校体育館への空調設備の整備を進めるよう求めています。

(文部科学省「学校体育館等への空調整備の加速に向けて」より)

(文部科学省「学校体育館等への空調整備の加速に向けて」より)

断熱改修と合わせた空調設備整備の事例

体育館に使われる空調設備には、 圧縮機の駆動源に電気を使用した電気モータヒートポンプ「EHP」と、ガスエンジンを使用したガスヒートポンプ「GHP」があります。

こうした空調設備を導入した事例を紹介しましょう。

愛知県A市

  • 豪雨で被災した教訓から避難の長期化を視野に入れたリスクに対応。
  • 避難所になる全12の小中学校の体育館と武道場に、電源自立型GHPと非常用発電設備を整備した。 停電時もそれらが稼働して電力を供給し、体育館内の照明や空調設備、非常用コンセントを使用できる。
  • また、非常用発電設備や空調設備の運転が72時間可能なLPガスを備蓄。災害時の炊き出しなどにガス器具を利用できる。

岐阜県B市

  • 5年計画ですべての市立小中学校を含む72の体育館に、外部バッテリーと発電機を搭載した電源自立型GHPの導入を進めている。
  • 災害時、この設備で発電した電力を空調以外の補助照明や通信機器の充電などにも利用することで、避難所としての機能向上を図る。

東京都C市

  • 4校の中学校の体育館にガス式マルチパッケージ型空調設備を整備。既存の屋根の上から新しい屋根を設置するカバー工法による断熱改修工事も同時に実施した。

大阪府D市

  • 避難所での健康被害を防ぐため、全公立中学校の体育館に都市ガス仕様のGHPの導入を進めた。
  • GHPに加え、ガスの供給停止に備えて燃料をLPガスに切り替えられる装置も整備している。

山形県E市

  • 7校の小中学校の体育館などに空調設備を整備した。
  • 断熱性を確保するため、サッシ未改修のガラス窓はペアガラスに入れ替え、サッシ改修済みのガラス窓には日射調整フィルムを貼付。
  • 気密性に欠ける鋼製吊戸はアルミ製ドアに改修した。
  • 暖房の暖気を滞留させないよう、天井部にはシーリングファンを設置している。

 

2024年の夏は全国的に猛烈な暑さとなり、年間の猛暑日日数が過去最多となった地点が多くなりました。 厳しい残暑にも見舞われたこの年のような状況が今後も続く懸念があります。平時にも災害時にも役割を担う学校体育館に、 消費電力を抑える高効率空調やエネルギー負荷を抑える建材や断熱材を取り入れながら、空調設備を整備していくことが重要といえるでしょう。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

参考

文部科学省
公立学校施設の空調(冷房)設備の今後について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/mext_00943.html

文部科学省
学校体育館等への空調整備の加速に向けて
https://www.mext.go.jp/content/20250109-mxt_sisetujo-000010164_1.pdf

東邦ガスネットワーク
ガス空調
https://www.tohogas.co.jp/nw/reasons/business/case-studies/case-01/

清須市ホームページ
全小・中学校体育館 空調設備設置工事が完了しました
https://www.city.kiyosu.aichi.jp/shisei_joho/koho_kiyosu/back_number/koho2022/kohokiyosu_202303.files/gyosei.pdf

ガスエネルギー新聞
ガス空調、避難所となる体育館にGHP
https://www.gas-enenews.co.jp/tokushu/4594/

日本教育新聞
脱炭素社会の実現に貢献する~エネルギー収支「ゼロ」の校舎へ~
https://www.kyoiku-press.com/post-253836/

一般財団法人 日本気象協会
2024年熱中症にまつわる夏の振り返りと「熱中症に関する意識調査」
https://weather-jwa.jp/news/info/post3875

ウェザーニュース
2024年は猛暑日が過去最多 温暖化が進むと猛暑日はどうなる?
https://weathernews.jp/s/topics/202409/260235/

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