【事例5選】GX(グリーントランスフォーメーション)企業の事例5選をご紹介します。|TOHOBIZNEX

「GX(グリーントランスフォーメーション)」に取り組む企業5事例をご紹介します

製品別のCO2排出量を見える化 GreenConnex(グリーンコネックス)

記事掲載日:2024/10/25

カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の同時達成に向けた取り組みを指すGX(グリーントランスフォーメーション)。 さまざまな活動のエネルギー源にクリーンなエネルギーを活用し、化石燃料を中心としてきた社会システムを変革しようとするものです。 今回はこのGX(グリーントランスフォーメーション)に積極的な企業の取り組みを紹介します。(ライター南由美子/nameken)

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GX(グリーントランスフォーメーション)

通信事業の全電力を2030年度までに再エネ化

日本経済新聞社が企業500社の取り組みをランク付けした「GX(グリーントランスフォーメーション)500」の2023年版で首位となったのが情報・通信業のA社です。 評価項目の5分野のうち「削減の目標設定」「情報開示」でトップの評価を得ています。

A社は2021年5月に「カーボンニュートラル2030」を発表。2030年度までに、通信事業に必要な電力のすべてを再生可能エネルギーに切り替え、 事業活動で使う電力などによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指します。 さらに、取引先などで排出される温室効果ガスも含めた「サプライチェーン排出量」を、2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」目標も設定しています。

2021年度には基地局電力の50%の実質再エネ化を達成し、2022年度には70%、2023年度は80%と段階的に実施。 基地局以外のすべての自社施設・設備の使用電力も、温室効果ガスの削減を進めていくとしています。

2023年4月には、データ処理に多くの電力を要する生成AIなどが普及する社会の進展を見据え、 再生可能エネルギーの安定確保とカーボンニュートラルを達成するため、「グリーントランスフォーメーション推進本部」を設立。 通信事業で使用するすべての電力に相当する再生可能エネルギーの調達を、20年間の長期契約で締結しました。 また、再生可能エネルギーを100%利用する地産地消型のグリーンデータセンターを、北海道で2026年度に開業する予定です。

容器の薄肉化やリサイクル技術の構築などに注力

「GX500」番外編で、調査回答企業が「優れていると思う」と挙げた企業で最も多かったというのが製造業(化学工業)のB社。サニタリー製品や化粧品などの製造・販売・物流を手掛けています。

同社は事業活動で排出されるCO2を2040年までにゼロ、2050年までにネガティブという目標を掲げています。 そのためにCO2の「リデュースイノベーション」と「リサイクルイノベーション」に取り組み、エネルギー効率の向上と使用するエネルギーのグリーン化を進めるとしています。 「リデュースイノベーション」では容器の薄肉化や詰め替えの促進のほか、プラスチックボトルレス化の加速、プラスチック製アイキャッチシールの全廃へ向けた取り組みを実施。 「リサイクルイノベーション」では商品の廃棄まで責任を持ち、 使用済みプラスチック容器のリサイクル技術の構築、高品質・低価格な再生プラスチックの開発と活用などに注力します。

また、2019年にESG戦略を策定。重点取り組みテーマの一つ、脱炭素に貢献する活動では、日本での購入電力の100%再生可能エネルギー化を2023年に実現しました。

今後は2030年までに、国内外の拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目標にしています。生産・物流拠点で太陽光パネルの導入を推進するほか、 2013年に稼働したロジスティクスセンターでは太陽光発電導入に加え、照明をすべてLED化。外装断熱や遮熱舗装といった総合的な環境負荷の低減にも取り組んでいます。

海外では、スペインのケミカル工場に森林認証を受けたバイオマスを燃料とする熱エネルギー生成設備を2023年に新設し、CO2排出を95%削減するそうです。

本業の外食以外に有機農業や風力発電も事業展開

「GX500」2023年版の外食産業で首位だったC社は、自社農園で有機農業に取り組むとともに、サプライチェーン全体での排出削減に取り組んでいます。

有機農業は2002年にスタートさせ、現在は国内7カ所の農場、約532ヘクタールで展開しています。 ここで採れた野菜は自社の食品製造工場で加工され、外食事業やグループの宅食事業で顧客に提供されます。

また、再生可能エネルギー事業として自社で風力発電設備の開発・建設・運転管理にも取り組んでいます。 秋田県の市民風力発電プロジェクトの風車建設を支援し、2012年3月から発電を始めました。 風力発電に加え、食品製造工場3カ所に設置したルーフソーラーでも発電。これら再生可能エネルギーを含めた電力をグループ内で使うだけでなく、社外へも販売しています。

カーボンオフセットによる“CO2ゼロ印刷”を実現

1881年創業の印刷会社D社は、社会課題解決を実践する「ソーシャルプリンティングカンパニー」を標榜しています。

1990年代からいち早く環境問題と向き合い、インキは石油系溶剤0%の植物性インキ、製本は針金を用いない製法を採用。 2004年からは印刷用紙に森林認証のFSC認証紙を取り入れ、現在では印刷物の83.1%をFSC認証紙に切り替えています。

2016年からは脱炭素化への取り組みを本格的に始動。印刷事業で排出される年間のCO2量を算定し、 その全量を政府のJ-クレジットなどを活用してカーボンオフセット。“CO2ゼロ印刷”を実現しています。

2019年には自社で使う電力を100%再生可能エネルギーに切り替えました。 消費電力のうち20%をまかなうのは自社工場での太陽光発電です。残り80%は外部の風力発電による電力を購入しています。

再生可能エネルギーに転換したことで、工場の電気トラブルの際に太陽光発電で直接電気を供給し、事業継続ができたというメリットがあったほか、 カーボンニュートラルへの取り組みや環境印刷に共感を持った会社からの問い合わせも増えているそうです。

建物の断熱化や創エネでエネルギー収支ゼロ以下へ

東海地方にある建設業のE社は、施設や住宅の建設、道路や公園の土木工事などを主に手がけています。

2050年カーボンニュートラル社会実現のため、事業活動に伴う温室効果ガス排出量を2030年度に2018年度比50%削減、2040年度に実質ゼロを目指しています。 目標に向けて、E社のグループでは建設はもちろん、再生可能エネルギーと農業の分野でも取り組みを進めています。

建設分野では、建物の断熱性能を高めるとともに、太陽光発電などで創エネし、エネルギー収支をゼロ以下にするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)および ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を2030年までに累計20棟以上普及促進するとしています。

再生可能エネルギーと農業の分野では、グループのなかのメタン発酵によるバイオガス発電施設で牛のふん尿や学校給食の残さなどを電気・熱・CO2に変換。 このうち熱とCO2は太陽光利用型植物工場で野菜栽培に使い、メタン発酵後の残さ物も肥料として利用しています。

このように、幅広い産業でさまざまなプロジェクトが動いています。 消費者も商品選択や購買でこうした動きを後押しすることで、GX(グリーントランスフォーメーション)が着実に進んでいくことでしょう。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

CN×P

参考

日本経済新聞
脱炭素経営「GX500」ソフトバンク首位に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC254Q20V21C23A0000000/?gift=g2ls5m3SoYqjE4MTA3NTUyNTOkQVBScLzml6XmnKzntYzmuIjmlrDogZ4g6Zu75a2Q54mIBQI.hkJRXjMz&n_cid=DSPRM1MAML01_ANNPU

ソフトバンク
サステナビリティ活動で高い評価を頂きました。
https://www.softbank.jp/corp/sustainability/special/esg-rating/

Forbes JAPAN CAREER
ソフトバンクの新たな挑戦
https://forbesjapan.com/articles/detail/68140

ソフトバンク
気候変動対策への貢献
https://www.softbank.jp/corp/sustainability/esg/environment/climate-change/

花王
花王サステナビリティレポート2024
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sustainability2024-21.pdf

花王
2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現への活動を加速
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2024/20240425-001/

花王
再生可能エネルギーの活用
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2024/20240425-001/

花王
花王スペインとENGIE、バルセロナの花王ケミカル工場にバイオマス熱利用プラントを新設、カーボン・ゼロをめざす
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230721-002/

NIKKEI GX
ワタミは農業、丸井は配送で排出減 GX500小売り・外食編
https://www.nikkei.com/prime/gx/article/DGXZQOUC16BDW0W3A111C2000000

ワタミ
環境事業
https://www.watami.co.jp/group/environment/

環境省
中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集
https://www.env.go.jp/content/000114657.pdf

大川印刷
CO₂ゼロ印刷
https://www.ohkawa-inc.co.jp/2017/10/25/co2-zero-printing-co₂ゼロ印刷/

経済産業省 中部経済産業局
中部発!カーボンニュートラル取組事例
https://www.chubu.meti.go.jp/d12cn/03_kigyo/18.pdf

八洲建設
私たちの想い
https://www.yashimaltd.com/vision#vision-sdgs

ビオクラシックス半田
ビオぐるファクトリーHANDAについて
https://biokurasix.jp/bioguru/

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