環境用語解説|「GX(グリーントランスフォーメーション)」をわかりやすく解説します|TOHOBIZNEX

カーボンニュートラル、エネルギー安定供給、経済成長の3つを目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」をわかりやすく解説します

製品別のCO2排出量を見える化 GreenConnex(グリーンコネックス)

記事掲載日:2024/10/21

化石燃料の枯渇や地球温暖化が懸念されるなか、関心が高まっているのがGX(グリーントランスフォーメーション)です。 カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の同時達成に向け、GX(グリーントランスフォーメーション)で社会システムそのものを変革しようと呼び掛けられています。 その背景や日本政府の取り組み、企業にとってのメリットなどを紹介します。(ライター南由美子/nameken)

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GX(グリーントランスフォーメーション)

クリーンエネルギーに移行しながらの経済成長へ

GXはグリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略称で、経済産業省の提唱によってこの言葉が使われるようになりました。

現代の効率的で快適な社会は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料をエネルギー源として発展してきた一方で、 CO2をはじめとする温室効果ガスの排出は地球温暖化をもたらしています。GXは、そうした化石燃料をできるだけ使わず、 太陽光や風力、水力、地熱などのクリーンエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動を意味します。単に化石燃料をクリーンエネルギーに転換するだけではなく、 温室効果ガス排出削減への取り組みを経済成長の機会にするために、産業や社会のシステム全体を変革していこうというものです。

GX(グリーントランスフォーメーション)が求められる最大の背景には、地球温暖化の進行があり、 その原因となる温室効果ガスの排出量を削減しなければ、気候変動や海面上昇、洪水、水不足などのリスクがさらに増します。 日本を含む世界の多くの国は、2050年までのカーボンニュートラルを表明しており、これを実現するには社会の仕組みそのものを変えていく必要があるためです。 また、ロシアによるウクライナ侵攻以降、エネルギーの安定的な確保が世界的に大きな課題として再認識されていることもあります。

日本では今後10年間で150兆円規模のGX投資が必要

政府の取り組みは以下のようにさまざまです。

●GX実行会議の開催

GXの実行に必要な施策を検討するため、2022年7月にGX実行会議が創設。 内閣総理大臣を議長として内閣官房長官や有識者などで構成しています。 同年12月に「GX実現に向けた基本方針」をまとめ、翌2023年2月に閣議決定されました。

基本方針には、エネルギー政策の全体論とGXを進めるための方法論の2つが盛り込まれています。

エネルギー政策はエネルギーの安定供給の確保を前提としたGXに向けた取り組みを示しています。 徹底した省エネの推進と製造業の構造転換、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用などが挙げられています。

GXを進める方法論では、経済成長とカーボンニュートラルを同時に達成するため、 今後10年間で150兆円を超える規模の官民によるGX投資が必要としており、それを実現・実行する「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げています。] 「カーボンプライシング」とは、炭素に価格をつけて炭素の排出者の行動を変容させる政策手法です。

まずは政府が支援策を講じて民間投資を後押ししようと、新たに「GX経済移行債」を創設。 10年間に20兆円規模の先行投資支援を実施し、再生可能エネルギーの推進や電気自動車の普及、製造業の脱炭素化などの投資につなげる考えです。

●GXリーグを設立

経済産業省は「カーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝てる企業群がGXを牽引する枠組み」としてGXリーグを設立。 企業が官・学と協働し、経済、環境、社会の好循環を実現するための議論や実践的な取り組みをしています。

2024年4月時点で日本のCO2排出量の5割超を占める企業群が参画。参画するには「自らの排出削減の取り組み」 「サプライチェーンでのカーボンニュートラルに向けた取り組み」「製品・サービスを通じた市場での取り組み」の3つの要件が必要です。

このほか、今後の日本におけるエネルギー政策の方向性を定めた法案「GX推進法」と「GX脱炭素電源法」や、GXを推進するための補助金など財政支援制度の整備なども行っています。

企業のメリットはイメージ向上やコスト削減など

一方、企業にとってGXに取り組むメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

1 企業イメージが向上し、将来の経済社会に適応できる

消費者や取引先に「環境問題に関心を持って積極的に取り組んでいる企業」というイメージを与え、ブランディングに活用できます。 さらに就職・転職希望者が増えて人材を確保しやすくなる可能性もあります。

また今後、カーボンニュートラル社会に向けて日本や世界が変わっていくことは明らかで、その変化に適応することによって成長のチャンスをつかむこともできます。

2 コスト削減につながり、収益増加の可能性がある

GXへの取り組みには、自社のエネルギー使用量削減が欠かせません。 取り組みのなかで太陽光発電システムなどを導入すると、使用エネルギーを再生可能エネルギーでまかなうことも可能になるでしょう。

こうした省エネの徹底や、コストが下がりつつある再生可能エネルギーの導入によって、企業のコスト削減や収益の向上につながる可能性があります。 そこで生まれた余剰予算を活用すれば、業務の課題解決や商品・サービスの拡充なども可能です。

3 政府の財政支援を受けられる

政府はGXを重点投資分野のひとつと位置付けており、温室効果ガスの排出量削減に励む企業を支援する 「ものづくり補助金(グリーン枠)」や「事業再構築補助金(グリーン成長枠)」、中小企業の省エネ支援を強化した「省エネ補助金」などのさまざまな財政支援を用意しています。

 

GXは経済社会システム全体の変革であるため、国や一部の企業だけが取り組んでも進んでいきません。企業の業種や業界を問わない横断的な取り組みと、消費者も巻き込んだ動きが不可欠といえます。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

CN×P

参考

経済産業省 METI Journal ONLINE
知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?
https://journal.meti.go.jp/p/25136/

日本経済新聞社 NIKKEI The KNOWLEDGE
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
https://nkbb.nikkei.co.jp/km/usage/column-202401-061/#index-3

経済産業省 資源エネルギー庁
「GX実現」に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gx_01.html

経済産業省資源エネルギー庁
「GX実現」に向けた日本のエネルギー政策(後編)脱炭素も経済成長も実現する方策とは
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gx_02.html

朝日新聞SDGs ACTION!
GX(グリーントランスフォーメーション)とは 政府や企業の取り組みを解説
https://www.asahi.com/sdgs/article/15029672

経済産業省
成長志向型カーボンプライシング構想
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gx-league.html

経済産業省
GXリーグ
https://gx-league.go.jp

NTT東日本 BizDrive
政府が推進「GX」は企業に何をもたらすのか?
https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/post_179.html

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