記事掲載日:2024/10/3
私たちの生活や産業に欠かせないプラスチックは、多くの利便性をもたらす半面、海洋汚染、資源枯渇といった問題に影響を及ぼす要因になっています。 その解決策の一つとして注目されるのがいわゆるバイオプラスチックです。 今回は、バイオプラスチックのなかでも再生可能なバイオマス資源を原料とする「バイオマスプラスチック」を中心に解説します。(ライター南由美子/nameken)
バイオプラスチックとは、植物などの再生可能な有機資源を原料とする「バイオマスプラスチック」と、 微生物などの働きによって最終的に二酸化炭素と水にまで分解する「生分解性プラスチック」の総称です。
「バイオマスプラスチック」は“原料”、生分解性プラスチックは“機能”に着目した分け方で、 「バイオマスプラスチック」には生分解されるものも、 されないものもあり、生分解性プラスチックには化石資源由来もあれば、バイオマス原料から製造するタイプもあります。
また「バイオマスプラスチック」には、バイオマス原料だけを使った全面的バイオマス原料プラスチックだけでなく、部分的バイオマス原料プラスチックも存在します。
「バイオマスプラスチック」は、従来のプラスチックの原料である石油などの化石資源に比べて1〜10年という短いサイクルで再生産できる植物などを使用しています。 主な原料はトウモロコシやサトウキビなどから取り出される糖類、トウゴマなどの植物油類です。
その種類はレジ袋やごみ袋、食品や化粧品の容器・包装など幅広く使われるバイオPE(ポリエチレン)、 耐熱性や耐衝撃性などの機能が強化された樹脂のバイオPC(ポリカーボネート)、 飲料用ボトルや食品包装フィルムなどに利用されるバイオPET(ポリエチレンテレフタレート)などがあります。
生分解性のあるタイプには、食品容器、繊維、農業用資材などに使われるPLA(ポリ乳酸)、 食器類や農業用資材となるPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)などが挙げられます。
(環境省「バイオプラスチックを取り巻く国内外の状況」より)
こうした「バイオマスプラスチック」には以下のメリットがあります。
●カーボンニュートラルへの取り組みに貢献
原料である植物は、光合成によって空気中のCO2を吸収します。 「バイオマスプラスチック」を燃やせばCO2が発生しますが、植物が吸収したCO2の量も加味すると、大気中のCO2を増やしにくい特性があります。
そのためCO2抑制に寄与し、地球温暖化防止対策として期待されています。
●化石資源の使用を削減
植物は繰り返し生産ができるため、枯渇が懸念されている化石資源の使用を抑え、依存度を下げることが期待されます。
実際に「バイオマスプラスチック」を導入している企業の事例を見てみましょう。
ある大手コンビニエンスストアでは、CO2 排出量の削減を目的に、弁当やサラダなどの食品容器にバイオPE、バイオPETを導入。 「バイオマスプラスチック」を含む環境配慮型素材の使用割合は、2019年の10%から2020年上期には33%に向上しています。 また、環境面での中長期目標を策定したビジョンのなかで「プラスチック対策」を掲げており、 オリジナル商品における環境配慮型容器包装の割合を2030年には60%に引き上げ、2050年には100%達成を目標にしています。
服飾用副資材の製造・販売を手がける企業では、ボタンにバイオポリエステルやバイオPAなどの「バイオマスプラスチック」を導入。 1990年代から環境配慮型ボタンのラインナップを拡充してきたなか、近年その流れが加速し、 アパレル業界だけに留まらず異業種からもさまざまな引き合いが急増しているといいます。
製薬会社ではバイオPEを用いた医薬品包装用シートの実用化に成功。 このバイオ医薬品包装用シートは、従来の石油由来のものに比べてCO2排出量が約40%低減されると推計されています。
製品の箱にマークを表示することで、医療従事者に「バイオマスプラスチック」の使用を伝えるとともに環境問題への意識啓発を図っており、 こうした活動で日本オープンイノベーション大賞の環境大臣賞や公益社団法人日本包装技術協会主催の木下賞(包装技術賞)などを受賞しています。
日本政府としては環境省、経済産業省、農林水産省、文部科学省が共同で2021年に持続可能なバイオプラスチックの導入を目指した 「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定。製造やリサイクルの技術・システム、消費者のライフスタイルのイノベーションを喚起し、 2030年までに「バイオマスプラスチック」を約200万トン導入する目標を設定しています。
環境省
プラスチック資源循環
https://plastic-circulation.env.go.jp/shien/bio
朝日新聞SDGs ACTION!
バイオプラスチックとは?
https://www.asahi.com/sdgs/article/15012767
日本バイオプラスチック協会
バイオマスプラスチック入門
http://www.jbpaweb.net/bp/
環境省
バイオプラスチックを取り巻く国内外の状況
https://www.env.go.jp/recycle/mat052214.pdf
環境省
バイオプラスチック導入事例集
https://www.env.go.jp/content/900516845.pdf
環境省
バイオプラスチック導入事例集(令和4年度版)
https://www.env.go.jp/content/000185878.pdf
環境省
バイオプラスチック導入ロードマップ
https://www.env.go.jp/content/900534511.pdf