記事掲載日:2024/7/12
<食品ロスの現状>
本来食べられるにも関わらず何らかの理由で捨てられてしまっている食べ物、いわゆる「食品ロス」は日本国内で年間523万トン(令和3年度推計値)にも及び、 このうち食品関連事業者から出る事業系食品ロス量が279万トン、家庭から出る家庭系食品ロス量は244万トンとなっています。 今回は飲食店が実際に取り組んでいる「食品ロス対策」の事例についてご紹介します。(経営コンサルタント 小山内正典)
日本国内の食品ロス年間523万トンという数字ですが、 これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2021年で年間約440万トン)の1.2倍に相当します。 そしてこの食品ロスを国民一人当たりに換算すると「お茶碗約1杯分(約114g)の食べもの」が毎日捨てられていることになります。
もちろん、この食品ロスの現状は日本国内の話だけではありません。 平成27年9月に国際連合で採決された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められている「持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットのひとつにも掲げられ、世界的に重要な課題とされています。
外食産業(飲食店)からも多くの食品ロスが発生していますが、飲食店における食品ロスには主に3つの要因が存在します。
① 仕入過剰によるロス
飲食店は基本的に「待ち」のビジネスです。その日何人のお客さまにご来店いただけるかを完全に把握することはできないため、適切な量を仕入れることができず、仕入れ過剰が発生して廃棄になるロスです。
② 食べ残しによるロス
商品にしてお客さまに提供した料理の食べ残しや、お客さまによるドタキャンやノーショー(予約を受けたにもかかわらずお客さまが現れない状態)が原因で廃棄になるロスです。
③ 調理過程におけるロス
食材の保存方法が不適切であったり、ひとつの食材を使い切らずに食べられる部分まで捨ててしまったりすることで発生するロスです。
それではこのような食品ロスを減らすために、飲食店ではどのようなことができるでしょうか?以下は取り組みの一例です。
■仕入れの最適化
曜日、月、季節別の実績や天気など、過去のデータを細かく分析することで需要を予測し、 必要な量を必要なタイミングで仕入れることで「仕入過剰によるロス」を削減します。この取り組みにより、無駄な在庫が減り、結果的に原材料費(原価)の節約につながります。 また、保存する冷蔵・冷凍庫のスペースにも余裕が生まれることで光熱費のコスト削減にもなり経済的なメリットも生まれます。
■メニューや提供方法の最適化
お客さまが食べ残しをしないように料理の量やサイズをチョイスできるようにしたり、オーダーを受けるときに適切な量をお伝えしたりするのも取り組みのひとつです。 食べきれる分だけ注文いただくことで食べ残しを減らすことができます。また、適切なタイミングで料理を提供することも食べ残しを減らすことにつながります。
これらの取り組みは食品ロス対策になると同時に顧客満足度の向上にもつながり、売上アップも期待できます。
■持ち帰りサービスの導入
海外では「ドギーバッグ」という食べ残しを持ち帰る文化があります。それと同じように、お客さまが食べきれなかった料理を持ち帰れるサービスを導入することで食品ロスを削減することができます。 ただし、食中毒などの衛生上のリスクもあるので導入には注意が必要です。衛生面の注意事項の説明や、生ものなどリスクの高い料理については希望されても応じないようにするなど、必要な対策を実施しましょう。 このサービスもお客さまへの新しい付加価値のひとつとして、顧客満足度の向上につながる取り組みです。
食品ロス削減はSDGsの目標「つくる責任 つかう責任」に貢献する取り組みです。SDGsでは2030年までに世界の食品ロスを半分に減らすことを目標としており、 食品ロスの削減を目標として掲げることは店の価値を高めるだけでなく、社会貢献にも寄与できます。また、その取り組みに共感する顧客の獲得にもつながるでしょう。
まだ食品ロス削減に積極的に取り組んでいない飲食店も、外食という事業の持続性を考えると「食品ロス削減」は避けて通れない課題です。 もちろん飲食店側だけでなく、お客さまにも理解していただき協力してもらうことが必要になります。 「食品ロス」を社会全体の課題として考え、社会全体でその課題に取り組み、食品ロスを削減していく。まずは自分たちができるところから取り組んでいくべきではないでしょうか。
消費者庁ウェブサイト
環境省 食品ロスポータルサイト
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html