環境用語解説|「業務用・産業用蓄電池」についてわかりやすく解説します|TOHOBIZNEX

再生可能エネルギーを効率的に活用する「業務用・産業用蓄電池」についてわかりやすく解説します

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記事掲載日:2024/3/28

カーボンニュートラルの実現に向けた目標が掲げられ、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進むとともに注目されているのが蓄電池です。 効率的に再生可能エネルギーを活用するために欠かせない業務用・産業用蓄電池について、家庭用蓄電池との違いも踏まえて解説します。(ライター南由美子/nameken)

オフィスや商業施設などで使われ、寿命が長く大容量

蓄電池とは充電をおこなって電気を蓄え、一回限りではなく何回も使用できる電池です。
電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車載用、スマートフォンやノートPCに内蔵される民生用、そして定置用に分けられ、定置用には主に業務用・産業用と家庭用があります。

家庭用蓄電池

オフィスや工場、商業施設、公共施設などに設置。かつては大規模施設で多く利用されていましたが、東日本大震災をきっかけに災害時を考慮して中・小規模の施設でも導入が進んでいます。

業務用・産業用蓄電池

住宅に太陽光パネルを設置し、昼間に発電をして使いきれなかった電気を蓄電池にため、夜間に蓄電池から電気を消費することで電気代を抑えられます。 東日本大震災後、災害時の停電対策として、またFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が順次終了を迎えることからも普及が進みつつあります。

業務用・産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違いを、蓄電池の「容量」「種類」「設置場所」から見てみましょう。

1 業務用・産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違い【容量】

容量については、家庭用が概ね17kWh以下(※)であるのに対し、業務用・産業用は10kWh台から20kWh台を中心に、500kWhを超える大容量タイプもあります。 また、業務用・産業用は状況に応じて蓄電池本体のほかにUPS (無停電電源装置)やCVCF(定電圧定周波数装置)の設置も求められます。 UPSは停電になると瞬時に電源の切り替えを行う装置で、パソコンやサーバーなどのシャットダウンを回避してデータの損失を防止します。 CVCFは電圧や周波数を一定に制御して、安定した品質の電気を供給する役割があります。

2 業務用・産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違い【種類】

蓄電池の種類は鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などさまざまあり、エネルギー密度の向上を追求し、 今も開発が続けられています。家庭用ではリチウムイオン電池が主流ですが、業務用・産業用ではリチウムイオン電池のほかにNAS電池も用いられます。 NAS電池はメガワット級の電力貯蔵システムで、大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長とし、 鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズです。メンテナンスは必要ですが、規模の大きな施設には大容量のNAS電池が適しています。

3 業務用・産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違い【設置場所】

設置場所として、業務用・産業用はある程度の広さが必要です。サイズが大きいというほかに、機器に熱が発生するため、 排熱のための通気経路や関連設備も必要だからです。また、リチウムイオン電池は零度を下回るような低温時は性能が低下し、 動作が止まってしまう懸念があるため、極度の寒さや暑さにならず、熱のこもらない風通しのよい場所を選ぶのが基本です。 家庭用も一定のスペースは必要で、寒冷地や風通しの悪い場所などは適していません。

名古屋市港区のみなとアクルス内にあるNAS電池

名古屋市港区のみなとアクルス内にあるNAS電池

(※)家庭用蓄電池は消防法で4800Ah未満と定められています。これをkWhに換算すると17.76kWhになるため、家庭用蓄電池の容量は20kWh未満と示されることもあります。

電力の自給自足や災害時に役立つのがメリット

業務用・産業用蓄電池を導入するとどんなメリットがあるのでしょうか。主に次のことが考えられます。

蓄電することで、再生可能エネルギーを安定的に使用

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候などによって出力が大きく変動するため、 電力配送電系統に大きな負荷をかけるリスクがあります。そこで蓄電池を併設し、電力送配電系統への負荷の平準化を図ります。

省エネと電気代削減

業務用・産業用蓄電池と再生可能エネルギー設備を組み合わせると、自社で電気をつくり、それをためて使用できるため、再生可能エネルギー電力の自給率向上が期待できます。 また、産業施設では一般的に多くの電力を消費しますが、電力需要のピーク時にあらかじめ蓄電池にためておいた電気を使うことで、電力需要のピーク時刻を抑えることが可能です。 このようにエネルギーの需要と供給を調整し、契約電力を最適化することで電力コストを抑えます。

災害への対応

災害などで停電が発生した場合、あらかじめ蓄電池にためておいた電気が非常用電源として役立ちます。蓄電容量によっては、 災害時には生産設備のバックアップに加え、照明やエアコンなどを稼働させて避難拠点の運用にも貢献できるため、事業継続計画(BCP)として太陽光発電と大型蓄電池を導入する企業も増えています。

企業価値の向上

日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げており、企業もそのための対策が求められています。 業務用・産業用蓄電池は再生可能エネルギー電源を有効活用でき、エネルギー消費量の削減につながることから、カーボンニュートラル実現を目指す企業としての姿勢を示せます。

なお、デメリットには「投資負担が大きい」「設置スペースに条件がある」ことなどが挙げられるでしょう。メリットはあるものの、 蓄電池本体だけでなく、設置工事費用や保守費用もかかります。また、蓄電池を設置するには適した場所を選ばなくてはなりません。

カーボンニュートラル実現のカギとして期待

導入には費用面などのハードルはありますが、経済産業省や環境省などの補助金で後押しがあり、エネルギー政策上重視されている蓄電システムは注目が高まっています。

2021年度には「グリーン成長戦略」において、蓄電池を環境に配慮した経済活動を行うグリーン化およびデジタル化の進展の要となる“新たなエネルギー基盤”と位置付け、 「第6次エネルギー基本計画」では再生可能エネルギーの普及に必要な技術として、促進していく方向が示されています

2022年度に取りまとめた「蓄電池産業戦略」でも、蓄電池は「2050年カーボンニュートラル実現のカギ」で、再生可能エネルギーの主力電源化に不可欠であり、 デジタル社会の基盤を支えるインフラの一つであるとして、世界市場を見据えた蓄電池産業の強化を目指しています。

国が推進するなか、懸念される自然災害への備えとして、平時の脱炭素化や省エネ、コスト削減の対策として、今後も導入が進んでいくと考えられます。

(経済産業省「蓄電池産業戦略」蓄電池市場の拡大より)

(経済産業省「蓄電池産業戦略」蓄電池市場の拡大より)

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

経済産業省 資源エネルギー庁

知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chikudenchi.html

三菱総合研究所

定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000050.pdf

東邦ガス

蓄電池で、いつもの暮らしをいつまでも
https://www.tohogas.co.jp/taiyoko-kaitori/chikudenchi/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=chikudenchi_g&gclid=Cj0KCQiAkKqsBhC3ARIsAEEjuJgnst3xLlHeKdrAuRABiLsOqpUmVQ2qFe_boXdwz1Qh02CZ1KQiyd0aAkAiEALw_wcB

日本ガイシ

NAS電池とは
https://www.ngk.co.jp/product/nas-about.html

国立研究開発法人 国立環境研究所「環境展望台」

蓄電池
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=110

経済産業省

蓄電池産業戦略
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy/battery_saisyu_torimatome.pdf

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