記事掲載日:2024/3/22
カーボンニュートラルへの取り組みが求められる中、その前提として「製造現場のDX」にもさまざまな効果があるといわれています。 愛知県豊田市に本社をおく三井屋工業株式会社では、同社のグループ会社であるセレンディップ・ホールディングスと東邦ガスの協力のもと、 「HiConnex(ハイコネックス)」と「GreenConnex(グリーンコネックス:通称グリコネ)」という二つのシステムを導入。その背景と成果について、 同社経営企画部 プロジェクトリーダーの松下紘之さんにお話を伺いました。(インタビューライター 生木卓)
松下さま:主に自動車のトランクの内装部品とホイルハウスライナー(タイヤの上部に取り付ける外装部品)の 製造・加工を行っています。愛知県と福岡県、山形県に工場があり、 ホイルハウスライナーについては、トヨタ自動車さまのほぼすべての車種に当社の製品が採択されています。
松下さま:もともと当社の製造現場では、日々の作業内容や製造の状況などについて、手書きの日報を作成して、 それを各部で回覧していました。すると、ある日の生産サイクルなどで問題があっても、それが周知されるのが数日後、 その時にはすでに対処のしようがない…ということが度々あり、問題視されてきました。そこで、2018年にセレンディップグループに参画したことをきっかけに、 製造現場で課題だった生産性と品質の問題を解決するためのデジタルツールとして、グループ会社が開発した「HiConnex」を導入することになりました。
松下さま:HiConnexの導入により、日報の電子化と記入内容の標準化が実現できました。 具体的には、全従業員にタブレット端末を配布して、社員証やかんばん式の製造管理カードにある2次元コード(QRコード)を読み取ることで、 誰が、いつ、どんな作業をしていたのかが、簡単に管理できるようになりました。 これにより、不具合発生の際の作業内容や不具合の状況などもリアルタイムで拾えるようになり、大幅な作業の効率化と状況の把握ができるようになりました。 その結果、以前は5%くらいあった工程内不良が、現在は0.5%以下にまで減少しています。
松下さま:グリコネは、セレンディップグループと東邦ガスが共同開発した、 機械や部品ごとの消費エネルギーやCO2排出量のデータをリアルタイムで収集できるシステムです。 これまで電気の使用量の計測というと会社単位や建物単位などでしかわからなかったのが、グリコネを実装したことにより、 設備ごと・製品ごとの電気の使用量やCO2排出量が1分単位で収集できるようになりました。管理画面ではデータが1分単位で更新され、 グラフ化もされているので、専門的な知識がない人でもすぐにデータを読み取ることができます。 計測機器の取り付けが簡単だったのもよかったです。
松下さま:HiConnexを導入したときもそうだったんですが、やはり新しいものを導入する際には、最初は不安やとまどいはありました。 しかし実際に導入してみると、操作も簡単でデータも見やすいので、すぐに「もっと早くに導入したかった」という声が多くあがりました。 特に電気の使用量については、家庭で使っている電気と比べることができるので、「そんなに使っているの!?」「たった1分の違いでこんなにも変わるの?」と、 すぐに実感してもらうことができ、現場から省エネ改善のアイデアがどんどん出てくるようになりました。
松下さま:年々カーボンニュートラルへの意識は高まりつつありますが、「では実際にどんなことをしたらいいの?」という人は多いと思います。 それが製造現場の作業者であればなおさらでしょう。その一方で製造現場の省エネや改善は、間違いなくカーボンニュートラルに貢献できます。 そのきっかけが、HiConnexやGreenConnexといった製造現場のDXです。 今後の製造業では、「DX」×「CN(カーボンニュートラル)」がトレンドになっていくのではないでしょうか。
松下さま:現場の生産性の向上については、まだまだデータを活かしきれていない部分があるので、 これからもっと活用できればと考えています。HiConnexやGreenConnexといったシステムについても、よりアップデートしていくために、開発者の方とも意見を交わしています。 加えて、三井屋工業では、素材のリサイクルにも力を入れています。すでに一部の製品では、廃プラスチックをリサイクルした材料が使われており、 こういった技術でも、カーボンニュートラルやSDGsに貢献していきたいと考えています。
カーボンニュートラル達成に向けた取り組みをトータルでサポートします。
工場の生産設備や、製品の課題を見える化。製品ごとのCO2排出量削減にむけた取り組みを支援します。