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建築物でCNを実現する「ガス設備を活用したZEB」について解説します

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記事掲載日:2024/3/22

カーボンニュートラル(CN)実現に向け、建築物の主要対策として「ZEB(ゼブ)」の普及が推進されています。 ZEBは電気設備によって実現するイメージが強いですが、近年はガス空調やガスコージェネレーションシステムの活用も進んでいます。 そうした「ガス設備を活用したZEB」について解説します。(ライター南由美子/nameken)

省エネと創エネでエネルギー消費をゼロにするZEB

ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、 快適な室内環境を実現しながら建物内で消費する年間の一次エネルギー(*1)収支をゼロにする建築物を意味します。

建物のなかでは、私たちが活動するためにガス、電気、熱といったエネルギーを空調、換気、照明、給湯、昇降機などの形で消費しています。

これらのエネルギーをできるだけ少なくする「省エネ」と、 使った分のエネルギーをつくり出す「創エネ」によって、エネルギー消費量を正味(ネット)ゼロに近づけられます。

ZEBを実現する場合、①断熱や自然採光などのパッシブ技術によってエネルギー需要を減らし、 ②必要な需要については高効率空調などのアクティブ技術によってエネルギーを無駄なく使い、 ③そのエネルギーを創エネ技術によってまかなう―といった段階的な検討が重要です。

(環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」から、ZEBを実現するための技術を表す図)

(環境省「ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)」から、ZEBを実現するための技術を表す図)

ZEBには4段階あり、再生可能エネルギーの導入や一次エネルギー消費量の削減などの違いにより、「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」に分けられます。 「Nearly ZEB」はZEBに限りなく近い建築物、「ZEB Ready」はZEBを見据えた先進建築物、「ZEB Oriented」はZEB Readyを見据えた延べ面積10,000㎡以上の建築物のことで、それぞれ認証基準が定められています。

(*1)一次エネルギー:石油、天然ガス、石炭、水力、原子力、風力、地熱、太陽光など、自然から直接採取できるエネルギーのこと。

 
 

(日本ガス協会「ガスZEBポータル」から、4段階のZEBの説明)

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に基づくエネルギー消費性能基準
出典:環境省ホームページ「ZEB PORTAL(https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/05.html)をもとに作成

不動産価値や事業継続性の向上がZEB化のメリット

建物をZEB化するメリットは、エネルギー消費量の削減のほか、以下の4つが挙げられます。

1 光熱費の削減

ZEB化を実現してエネルギー消費量が減ると、建物にかかる光熱費も削減できます。

2 快適性・生産性の向上

自然エネルギーの適切な活用、空調や照明の制御などによって、快適性や生産性を向上できます。

3 不動産価値の向上

環境やエネルギーに配慮した建築物は、不動産価値や街の魅力の向上につながります。

4 事業継続性の向上

ZEBの建物は、災害などの非常時において必要なエネルギー需要を削減でき、さらに再生可能エネルギーの活用によってエネルギーの自立に近づけることができます。

節電対策や災害復旧にも有効な「ガスZEB」

ZEBが推進されるなか、ガスヒートポンプ(GHP)のガス空調やガスコージェネレーションシステムを活用した「ガスZEB」も全国で続々と増えています。

ガス空調は電気式よりも電力消費量が少なく、電気料金も低く抑えられるのが特徴の一つです。 ガスコージェネレーションシステムは、都市ガスを燃料として、必要な場所で電気をつくり、発電と同時に発生する熱を冷房、暖房、給湯、蒸気などに利用できるシステムです。 従来型システムのような送電ロスがなく、電気と熱を有効利用できるため、高いエネルギー効率が実現できます。

こうしたガス設備を利用したZEBは、新築の際に適用するだけでなく、ガス設備を更新する際に建物の省エネ改修と組み合わせることでも実現できます。

「ガスZEB」のメリットは主に次の3つです。

1 節電対策

近年課題となっている電力の需給ひっ迫の原因の一つは、空調稼働による電力消費の増大です。 ガス空調やガスコージェネレーションシステムは、電気使用量を減らし、節電に大きく貢献できます。 また、太陽光発電設備、蓄電池と組み合わせると、昼間に発生した余剰電力を夜間にシフトし、電気代削減につながります。

2 排熱の有効利用

ガスコージェネレーションシステムは、発電と併せて排熱を活用することで、給湯用エネルギー消費量の削減や、暖房と冷房に使うエネルギーの削減につながります。

3 レジリエンス(回復力)性能向上

都市ガスは耐震化率の向上などにより、震災からの復旧期間が大幅に短くなっています。 また、風水害被害による供給支障件数がほかのインフラに比べて少なく、災害時のエネルギー供給継続性が高いことが注目されています。 自然災害による停電時でも、停電対応型のガスコージェネレーションシステムや停電対応型のガスヒートポンプで発電などが可能です。

公共施設や企業を中心に広がる「ガスZEB」の建築物

「ガスZEB」の事例は全国に広がっています。

公共施設としては、築50年を超える4階建てを改修して「ZEB Ready」認定を受けた九州地方の庁舎があります。 Low-E複層ガラスなどで断熱性能を向上させるとともに、高効率なガス空調設備への更新やLED照明の設置などで大幅な省エネを実現しました。

2020年1月に竣工した東海地方の校舎は、小中一貫校として全国初のZEB認定を受けました。 新築の建物には、先進的な空調システムとさまざまなパッシブ技術を導入。ガス空調やガスコージェネレーションシステムも採用し、省エネと省コストに貢献しています。

また、ゼロカーボンシティを目指す東海地方の自治体では、地区拠点施設を新築し「Nearly ZEB」認証を取得。 高断熱化を図り、高効率の空調設備や換気設備の導入で省エネ化するとともに、再生可能エネルギーである太陽光発電の活用でエネルギー消費量を削減します。

ほかにも企業、商業施設、病院などで続々と「ガスZEB」が生まれています。 そのメリットから、これまではあまり進んでいなかった高層ビルや超高層ビルでも「ZEB Ready」の建物が建ち始めており、今後もこうした動きが進んでいくと考えられます。

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≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

参考

環境省

「ZEB PORTAL」 ZEBの定義
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html

一般社団法人 日本ガス協会

「ガスZEBポータル」 ZEBの概要
https://www.gas.or.jp/gaszeb/#outline

環境省

「ZEB PORTAL」 ZEBを実現するための技術
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/06.html

環境省

「ZEB PORTAL」 ZEB化のメリット
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/03.html

ガスエネルギー新聞

建築物を「ガスZEB」に
https://www.gas-enenews.co.jp/tokushu/2131/

一般社団法人 日本ガス協会

「ガスZEBポータル」 ガスZEBとは
https://www.gas.or.jp/gaszeb/about.php

一般社団法人 日本ガス協会

「ガスZEBポータル」 ZEBの事例
https://www.gas.or.jp/gaszeb/case_menu.php

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