環境用語解説|TCFDとは?概要と開示項目をわかりやすく解説します。|TOHOBIZNEX

企業の気候変動への取り組みを評価する「TCFD」の概要をわかりやすく解説します

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記事掲載日:2023/12/15

カーボンニュートラル実現に向けた社会の変化を背景に設立された機関が「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。TCFDは、気候変動のリスクと機会が企業にもたらす財務的影響について情報開示するよう推奨しており、 開示に賛同する企業や組織は年々増えています。 今回はこのTCFDの概要や開示項目の一つであるシナリオ分析などについて紹介します。(ライター南由美子/nameken)

気候変動に対する金融の安定化を目指して設立

近年、自然災害による被害が激甚化しており、気候変動は金融システムの安定を損なう恐れがあると問題視されています。 洪水や暴風雨による被害や、サプライチェーンの寸断、資源枯渇に加え、 カーボンニュートラル社会への移行に伴い、温室効果ガス排出量の大きい企業は評価が下がることなどが懸念されるためです。

投資家が企業の気候変動に対する取り組みを評価するには、企業の適切な情報開示が欠かせません。 金融の安定化を目指すため、金融安定理事会は、G20の要請を受け、2015年にTCFDを設立。 2017年、財務情報の開示を推奨する「TCFD 提言(最終報告書)」を公表しました。

その目的は、投資家などの投資判断基準となる一貫性、比較可能性、信頼性、明確性を持つ効率的な情報開示を企業へ促すことです。 情報開示が求められる対象者は社債または株式を発行しているすべての組織体です。

「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を開示

TCFD提言では「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という4つの要素があり、 これらに関する11項目の情報開示が求められています。

なかでも特徴的なポイントは「戦略」の項目として具体的なシナリオ分析が挙げられていることです。 「さまざまな気候変動シナリオに基づく検討を踏まえ、組織戦略のレジリエンス(回復力)について説明する」とされ、投資家が知りたい企業の将来性を示すものです。

シナリオ分析とは、地球温暖化や気候変動に伴う事業環境の変化を予想し、リスクと機会が自社の事業や財務状況にどう影響するかを検討する手法です。
シナリオ分析には労力や時間が必要ですが、不確実な未来において企業の対応力を対外的に主張できます。 環境省によるシナリオ分析実践ガイドでは、ゴールは「気候変動への対応と企業価値向上の同時実現」としています。

TCFD提言の開示推奨項目

(日本取引所グループ「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」)

(日本取引所グループ「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」)

シナリオ分析を実施する手順は次の6ステップです。

1 ガバナンス整備

・企業としてのシナリオ管理をしっかり行うために取締役会や経営陣の理解と支持を得る。

・気候関連課題を経営管理プロセスに組み入れ、監査とリスク委員会を通じて監督する。

2 リスク重要度の評価

・市場や技術の変化、政策や法律など、企業が直面しうるリスクと機会を洗い出し、財務上どのような影響を及ぼすかを検討。自社にとっての重要度を評価する。

・リスクをサプライチェーン別などに細分化することで、企業の経営に即した分析が可能になる。

3 シナリオ群の定義

・使用が推奨されている「2℃シナリオ」、地球温暖化が進んだ場合の「4℃シナリオ」といった平均気温の上昇度別に、それぞれどのようなことが起こり得るかシナリオ分析を行う。

・可能な限り、温度帯や世界観が異なるシナリオも検討することで、想定外をなくすことにつながる。

4 事業インパクト評価

・それぞれのシナリオによる事業や財務への影響度を評価する。

5 対応策の定義

・評価した結果を踏まえ、ビジネスモデルや資源配分の変革、技術への投資など対応策を検討する。

6 文書化と情報開示

・シナリオ分析の過程と結果を文書化する。

・関連組織・関連企業とコミュニケーションをとる。

・読み手目線で情報を開示する。

また、TCFDは2021年10月にTCFD提言に係るガイダンスを公表し、4つの要素のなかの「戦略」と「指標と目標」を改訂しました。

そのうち「指標と目標」では「スコープ1、スコープ2及び当てはまる場合はスコープ3の温室効果ガス排出量と、 その関連リスク」の開示を求めていますが、改訂によってすべての組織においてスコープ3排出量の開示を「強く推奨」とされました。 必須ではなく、その算定方法に技術的な課題があるとしながらも、投資家からの開示要請が依然として高いためです。

賛同する企業・組織が増え、世界のスタンダードへ

企業にとってTCFD提言の実施はどのようなメリットがあるのでしょうか。環境省は潜在的メリットとして次の4つに大別しています。

●企業が気候関連リスクを適切に評価・管理することは投資家や貸付業者からの信頼につながり、金融機関による投資が増加する。

●財務報告において気候関連リスクに係る情報開示をすることで、通常の会社開示情報の信頼性がより向上する。

●企業における気候関連リスクと機会に関する認識・理解向上は、より強固な戦略策定に寄与する。

●TCFDが提言する情報開示枠組みを活用することで、気候関連情報を求める投資家のニーズに応えることができる。

なお、実際に開示・活用している金融機関・非金融機関にTCFDコンソーシアムがアンケート調査を行ったところ、多くが幅広いメリットを感じているとし、 特に「投資家を含む金融機関等との関係向上」や「自社の気候関連リスクと機会についての社内の理解深耕」に回答が集まりました。

TCFDに賛同する企業・機関は当初の約100から、2023年10月時点では世界全体で4,885へと飛躍的に増加。 日本では1,475の組織が賛同し、環境省、金融庁、経済産業省、経団連も名前を連ねています。 2022年4月からは、東証プライム市場上場企業にTCFDか同等の基準に基づく情報開示が実質義務化されました。

ほかにCDPなどの開示フレームワークや評価機関もTCFD提言と整合させるために改訂を行っており、TCFDは今や日本および世界のスタンダードになりつつあります。

(TCFDコンソーシアム「TCFDとは」)

(TCFDコンソーシアム「TCFDとは」)

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

環境省

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の概要資料
https://www.env.go.jp/content/900500262.pdf

TCFDコンソーシアム

TCFDとは
https://tcfd-consortium.jp/about

環境省

TCFDを活用した経営戦略立案のススメ
~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド ver3.0~
https://tcfd-consortium.jp/pdf/about/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf

株式会社日本取引所グループ

TCFD提言に沿った情報開示の実態調査 (2022年度)
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esg-investment/support/nlsgeu0000045isq-att/TCFDsurveyjp.pdf

日本取引所グループ

「TCFD実務ガイド」 日本企業の実務に役立つポイントとは
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/news-events/nlsgeu000004ojdu-att/4.pdf

環境省

戦略(シナリオ分析)
https://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/kigyo/2-08_kaisetusyo_senryaku%28shinariobunseki%29_190411.pdf

環境省

なぜサプライチェーン排出量を算定するのか?
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_syousai_02_20230301.pdf

TCFDコンソーシアム

2023年度 TCFDコンソーシアム TCFD開示・活用に関するアンケート調査
https://tcfd-consortium.jp/pdf/news/23092901/Questionnaire2023_results_general-j_r.pdf

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