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「太陽光発電」の仕組みと最新動向をわかりやすく解説します。

東邦ガスの「オンサイト太陽光発電システム(PPAモデル)」

記事掲載日:2023/12/05

2050年カーボンニュートラル実現のために欠かせない再生可能エネルギーの導入。 なかでも主力である太陽光発電は研究の進展とともに性能が高まってきており、今後さらなる普及が期待されます。その仕組みと最新動向について解説します。(ライター南由美子/nameken)

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住宅の普及率は佐賀県がトップ、世界では中国圧倒

政府が策定したエネルギー基本計画では、「温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギー源」 である再生可能エネルギーには「最優先の原則で取り組む」とされ、2030年の電源構成比は36〜38%と高い目標が掲げられています。

そのなかでも太陽光発電は、電力の買い取り制度や補助金のサポートもあって導入が拡大しています。 太陽光発電の電源構成比は2011年度の0.4%から、2012年7月のFIT制度(固定価格買い取り制度)開始を経て、 2020年度は7.9%に増加。エネルギー基本計画では2030年度に14~16%まで増やす目標です。

再生可能エネルギー導入推移

出典:再生可能エネルギー導入推移(経済産業省資源エネルギー庁「次世代型太陽電池に関する国内外の動向等について」)
 
 

普及が進む国内でも地域別に見てみると、「太陽光を利用した発電機器あり」の住宅の割合は、総務省統計局の2018年の調査では最も高いのが佐賀県、次いで長野県、宮崎県です。 「日照時間の長い地域または快晴日数の多い地域で太陽光発電機器の設置が普及している状況」と分析されています。

再生可能エネルギー導入推移

出典:総務省統計局
 
 

世界に目を移すと、2022年はコロナ禍や紛争があったにも関わらず、太陽光発電市場が大きく成長しました。 電力需要に占める太陽光発電のシェアが10%を超えた国は9カ国あり、特にスペインは19%以上、ギリシャとチリも17%を超えています。 ただ、累積導入量は過去の導入水準の影響を受けるため、スペインの累積導入量は世界7位であっても第5位のドイツの半分にも及んでいません。 年間導入量と累積導入量のどちらも世界最多は中国で、累積導入量はEUの2倍近くに達します。 中国は産業政策やイノベーションへの支援などによって太陽光や風力による発電能力を急速に高めており、 2030年達成を目指しているグリーンエネルギー目標を予定より5年早くクリアする見通しだといいます。日本は2021年と同水準で堅調でした。

2022年の太陽光発電システム年間導入量と累積導入量

出典:2022年の太陽光発電システム年間導入量(左)と累積導入量(右)(NEDO)
 
 

変換効率は10倍、製造コストは100分の1以下へ

もともと、太陽光発電はどのように始まったのでしょうか。

太陽光発電は、光があたると電気を発生させる「太陽電池」を使っています。 この「太陽電池」が生まれたきっかけは、1839年にフランスの学者が金属の板に光を当てると電気が発生することを見つけ、1883年にアメリカの発明家が太陽電池の原型を開発したことです。

太陽電池が光エネルギーを電気に変換する時の効率を「変換効率」と呼び、 数値が高くなるほど多くの電気を生むことができますが、当初の変換効率はわずか1〜2%だったといわれ、実用化はされませんでした。 現在、太陽電池の変換効率は約15~20%で、世界中の研究者やメーカーがこの数値の向上に取り組んでいます。

日本では1955年に初めて太陽電池がつくられ、数年後に太陽光発電システムとして実用化されます。 1973年のオイルショックを機に安定的なエネルギーが求められるようになり、1974年から2000年まで国家プロジェクトとなった 「サンシャイン計画」で本格的な再生可能エネルギーの導入に取り組みました。1970年代当時の太陽電池製造コストは1Wあたり数万円と高かったのですが、 サンシャイン計画では100分の1以下の1Wあたり100円まで下げることを目標に据えました。 なお現在、日本の太陽光発電の発電コストは2020年が13.6円/kWhで、2025年には10円未満になると見込まれています。

日本における変換効率の見通し(環境省「太陽光発電の導入見込量と関連情報について」)

出典:日本における変換効率の見通し(環境省「太陽光発電の導入見込量と関連情報について」)
 
 

日本発の最新技術「ペロブスカイト」にも期待

太陽電池には素材や構造の違いでさまざまな種類があります。
大きく分類すると「シリコン系」「化合物系」「有機系」があり、現在もっとも普及しているのはシリコン系で、 結晶シリコン系太陽電池が世界市場の9割以上を占めています。この結晶シリコン系では、2017年の資料によると日本企業がセル単位(※) での変換効率26.6%、モジュール単位での変換効率24.4%を達成しています。

化合物系は人工衛星や宇宙ステーションでも使われており、 日本企業がセル変換効率37.9%、モジュール変換効率31.7%を実証しました。 特殊な構造を導入することで、理論的には60%以上の変換効率が可能ともいわれています。

これらの太陽電池は壊れにくく、変換効率が高いものの、材料や製造コストは比較的大きくなります。 シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができないため、設置場所の制限もありました。

こうしたなか次世代型と注目されているのが、有機・無機ハイブリッドの「ぺロブスカイト太陽電池」です。 2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力(つとむ)教授が世界で初めて報告し、 最近飛躍的な成長を遂げており、シリコン系に対抗し得ると有望視されています。

ペロブスカイトは結晶構造を持つ有機化合物で、その太陽電池は研究段階ですが、 ペロブスカイトの溶液を基板に塗るだけという製造工程のシンプルさから、低コスト化が実現できると期待されています。 また、フィルムのような薄い基板に塗れば、軽量化や曲面加工ができるため、太陽電池の設置場所が広がる可能性もあります。

普及するためには課題があり、大面積化、長寿命(高耐久)化、設置方法、 周辺機器を含めた太陽光発電システムの確立が求められます。これらの課題解決に向けて、日本企業も積極的に研究を行っています。 さまざまな場所に設置でき、少ない面積で大きな電力が得られる理想的な太陽電池が実現すれば、CO2低減に貢献できます。

このほか、大学などでは太陽光から水素への変換効率が世界最高水準の13.9%の「太陽光水電解装置」を開発。 ハウスメーカーでは太陽光発電による電力から自宅で水素をつくり、電力を自給自足する「水素住宅」の実用化を目指しているほか、 研究開発法人では太陽光エネルギーと光触媒によって水を分解し、そこから得られる水素とCO2を原料とした化学原料を製造する 「人工光合成プロジェクト」に取り組むなど、 カーボンニュートラル実現に向け、太陽光を利用したさまざまな技術開発が加速度的に進められています。

(※)セルは太陽電池の最小単位の素子。モジュールはセルを連結して板(パネル)状にしたもの。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

経済産業省 資源エネルギー庁

エネルギー基本計画
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_01.pdf

経済産業省 資源エネルギー庁

次世代型太陽電池に関する国内外の動向等について
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/green_power/pdf/003_04_00.pdf

BBC NEWS JAPAN

中国で「グリーンエネルギー」が急増 気候変動対策にプラス効果
https://www.bbc.com/japanese/66054224

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEA PVPS)報告書
https://www.nedo.go.jp/content/100785821.pdf

経済産業省 資源エネルギー庁

なっとく!再生可能エネルギー
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html

総務省統計局

統計Today
https://www.stat.go.jp/info/today/152.html

経済産業省 資源エネルギー庁

変換効率37%も達成!「太陽光発電」はどこまで進化した?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/taiyoukouhatuden2017.html

総務省統計局

統計Today
https://www.stat.go.jp/info/today/152.html

経済産業省 資源エネルギー庁

再生可能エネルギーの歴史と未来
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienerekishi.html

経済産業省 資源エネルギー庁

太陽光発電について
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/073_01_00.pdf

環境省

太陽光発電の導入見込量と関連情報について
https://www.env.go.jp/content/900449235.pdf

国立研究開発法人 科学技術振興機構

ペロブスカイト型太陽電池の開発y
https://www.jst.go.jp/seika/bt107-108.html

NTT技術ジャーナル

ペロブスカイト太陽電池と水素でカーボンニュートラルをめざす
https://journal.ntt.co.jp/article/23100

日刊工業新聞ニュースイッチ

太陽光→水素変換で世界最高水準13.9%、新潟大が開発した電解装置の仕組み
https://newswitch.jp/p/32830

積水ハウス株式会社

ゼロカーボンを実現する住宅メーカー初の水素住宅
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2023/20230714/

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

世界初、人工光合成によるソーラー水素製造に初めて成功
https://webmagazine.nedo.go.jp/release-guide/RG-FN83-A/

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