企業の取り組み事例から見る「カーボンフットプリント」の意義と可能性|TOHOBIZNEX

企業の取り組み事例から見る「カーボンフットプリント」の意義と可能性

製品別のCO2排出量を見える化 GreenConnex(グリーンコネックス)

記事掲載日:2023/09/08

2050年のカーボンニュートラルを達成するには、企業の脱炭素・低炭素製品が顧客に選ばれるような社会をつくっていかなくてはなりません。 その基盤となるのが「カーボンフットプリント(英語の正式呼称はCarbon Footprint of Products、略称CFP)」の仕組みです。 商品名にカーボンフットプリントの数値を取り入れるなどの先進的な事例から、その意義と可能性を見ていきましょう。(ライター南由美子/nameken)

CO2排出量を「製品」ごとに見える化

2023年3月、経済産業省と環境省は連名で「カーボンフットプリント ガイドライン」を発表。 同年5月にはガイドライン別冊としてカーボンフットプリントの算定方法などを詳しく解説した「実践ガイド」も公表しました。 それまで不明確な部分もあったカーボンフットプリント(CFP)の算定ルールを国としてまとめたものです。

ガイドラインの定義によると、カーボンフットプリント(CFP)とは製品やサービスのライフサイクル全体を通して排出される 温室効果ガスの排出量をCO2量に換算して製品に表示する数値、もしくは仕組みを指しています。

CO2など温室効果ガスの排出量算定の国際的基準には「GHG(Greenhouse Gas)プロトコル」があります。 これがサプライチェーン全体の“組織”単位で算定するのに対し、カーボンフットプリント(CFP)は“製品”ごとに行うのが特徴です。 また、カーボンフットプリント(CFP)の算定は、 実務上、参照値を用いた算定が主流となっていますが、本来はCO2排出量の実測値を用いることが望ましいとされています。

カーボンフットプリント

商品名にCFP値を取り入れる企業も

カーボンフットプリント(CFP)の仕組みを取り入れると、 CO2排出量を正確に計測・見える化してサプライチェーン全体で共有できます。それによって優先的に取り組む課題を特定し、 効率的な対策を打ったり、その効果をモニタリングしたりしやすくなり、排出削減の加速化につながります。

製品を輸出する企業にとっては、海外の取引先や組織からカーボンフットプリント(CFP)の 報告を求められることもあるので、競争力の維持・向上にカーボンフットプリント(CFP)が必要になります。

また、取引先や消費者に向けては、カーボンニュートラルへの取り組みに積極的な姿勢をアピールし、 ブランディングに活用できます。たとえば、あるスポーツ用品メーカーはカーボンニュートラルに向けた最新の取り組みとして、 スニーカーの商品名にCFP値を入れました。このスニーカーを製造するときに排出されるCO2 量が数字として入っており、 その数値は現時点で温室効果ガス排出量が公表されているスニーカーの中では最少だそうです。

こうした取り組みが普及すれば、取引先や消費者にとっても排出量の少ないものを選びやすくなるでしょう。

異業種連携や業界団体の後押しに期待

すでに異業種企業が連携してカーボンフットプリント(CFP)に取り組んでいる事例も見られます。 「国内石油業界初」というCFP算定・管理システム構築の共同検討をスタートすると2023年3月に発表したエネルギー企業は、 石油製品のカーボンフットプリント(CFP)を可視化し、 同年度中に潤滑油などのカーボンフットプリント(CFP)データを顧客に提供したいとしています。

連携するのは、カーボンフットプリント(CFP)算定・管理のノウハウを持つ大手通信データ会社と 名古屋市の環境コンサルタント会社です。 3社はこの検討を通してカーボンニュートラル実現に貢献し、気候変動に対応した新たな社会の実現を目指すとしています。

環境省も日本企業のカーボンフットプリント(CFP)の取り組みを拡大しようと 「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業への参加企業」を募集しました(募集期間は2023年8月4日まで)。 カーボンフットプリント(CFP)の算定・表示を通じて排出削減とビジネスの成長を両立させる「先進的ロールモデル」となる企業の創出を目指すそうです。

「カーボンフットプリント ガイドライン」と同時期に発表された「カーボンフットプリント レポート」では、 今後の方向性としてより正確な排出量を把握するには「サプライチェーンを構成する中小企業や農家・食品関係者等にも カーボンフットプリント(CFP)を算定・開示してもらう必要がある」とした一方、 「排出量の見える化や削減の取り組みがコスト増や業務負担増につながり、中小企業の経営を圧迫することに対する懸念の声もある」としています。

カーボンフットプリント(CFP)の取り組みは個別の企業では対応が難しい場合が多いため、 業界団体や企業関係者が連携するなど、外部の働きかけや後押しが一層強く求められていくことでしょう。

製品別のCO2排出量を見える化 GreenConnex(グリーンコネックス)

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

参考

経済産業省、環境省

カーボンフットプリント ガイドライン
https://www.env.go.jp/content/000124385.pdf

サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会

カーボンフットプリント レポート
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230331_2.pdf

経済産業省、環境省

カーボンフットプリント ガイドライン(別冊)CFP実践ガイド
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_4.pdf

株式会社アシックス

プレスリリース
https://corp.asics.com/jp/press/article/2022-09-16

ENEOS株式会社

ニュースリリース
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20230317_01_01_2008355.pdf

環境省 報道発表資料

製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業への参加企業募集について
https://www.env.go.jp/press/press_01819.html

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