記事掲載日:2023/8/21
「人手不足のため、臨時休業とさせていただきます」
「人手不足のため、メニューを絞って営業しています」
最近SNSだけでなく、実際にこんな貼り紙をしている飲食店を見かけるようになりました。 実際に人出不足が原因で廃業している飲食店もたくさんあると聞きます。 ネットニュースでも頻繁に「飲食店の人出不足」が取り上げられている今「深刻化する人手不足」に個人店が打つべき手は何でしょうか?
本記事では、飲食を専門に扱う経営コンサルタントの視点から、 個人飲食店が人手不足を解消するための対策を考えていきたいと思います。(経営コンサルタント 小山内正典)
スタッフが必要になると、一般的には求人メディアや広告代理店に依頼をして求人広告を掲載します。 その担当者に自店の採用条件を伝え、原稿を作成してもらって掲載すればある程度採用はできていました。比較的経費に余裕があった今までは、業者に依頼をするだけでよかったのです。
求人広告だけに頼っていた個人営業の飲食店の場合は、お店独自にスタッフを採用するノウハウが蓄積されておらず、仮にお客さまを呼ぶためのノウハウは持っていても、 採用に関してはお店独自にスタッフを採用するノウハウがないケースが多く見られます。人出不足が大きなニュースになっている今こそ意識を変えるときなのかもしれません。
必要な人員を減らすためにモバイルオーダーシステムや、セルフレジなどのDX(デジタル・トランスフォーメーション)を 導入したりすることも人出不足を解消するひとつの手段ではありますが、高額な費用もかかるため、ここではもっと基本的な3つのポイントを挙げていきたいと思います。
求人広告を見た方はその店の名前をGoogleやYahoo!、SNSで検索します。 そのときにホームページやInstagramなどのSNSがあることが安心感を与え、応募に繋がります。ホームページを制作するには費用も手間もかかってしまいますが、SNSなら無料でできます。
採用情報は求人媒体に掲載されているので、店の雰囲気や料理などお店のことがわかる情報をぜひ発信してください。 働く場所を探している方にとって、情報が少ない店に応募するのは勇気が必要です。そのため、その障壁を少しでも取り除いてあげることが重要です。
なんとなく近隣飲食店の様子を伺いながら時給を決めていませんか? 新型コロナによりアルバイトの飲食店離れが起こった今、比較するのは近隣飲食店だけでは不十分です。 店の都合だけを押し付けた労働条件では人は集まりません。2023年7月28日、厚生労働省は2023年度の最低賃金について、全国平均で初めて1000円を超える目安を取りまとめました。 時給アップはもう避けられないことなので、ここは真摯に受け入れて対応しなければいけません。
飲食店は「付加価値ビジネス」です。新しい商品や価値を生み出して利益率を上げる等、プラスアルファの売上をつくることで、人件費を補填するしかありません。 「近隣の飲食店が値上げしないからこっちが値上げをするとお客さまが来なくなってしまうのではないか?」というような不安をゼロにすることは難しいと思います。
しかしながら、「時給を上げられない→スタッフが集まらない→売上が作れない」という負のスパイラルから脱却するためにも「時給を上げる」という決断をすることが重要です。
求人を見て応募があった場合のレスポンスも、実は採用を成功させるための重要な要素のひとつです。 今や応募はWEB経由がほとんどで、それに対するレスポンスは可能な限り1時間以内にするべきです。とはいえ仕込みの最中や営業時間中に対応することは簡単ではありません。 しかし、それが遅くなることで他の飲食店や他業種に応募者を取られてしまうリスクが増加します。
また、面接時の対応についても改善できることはたくさんあります。例えば、飲食店の休憩時間に面接する場合、 ユニフォームを脱いだりして清潔感のない服装になってしまっていたりするケースが見られるようです。 他にも店内の様子が薄暗かったり、応募者に良い印象を与えるものではない環境で面接を実施してしまっているお店もあるのではないでしょうか。
応募者は面接担当者以外のスタッフのことも見ています。面接予定時間に店にいるスタッフには面接スケジュールを共有して、 スタッフ全員で受け入れ側の良い環境をつくることも採用を成功させる重要な要素のひとつです。
飲食店は忙しい商売です。メニューを考えて、仕入れをして、仕込みをして、店をキレイにして、お客さまを迎え入れ、商品とサービスを提供し、後片付けをする。 人材採用のための時間なんてないという方も多いと思います。ですが、人材採用に対する意識を変えていかなければずっと人出不足に悩み、負のスパイラルに陥り、店が行き詰ってしまいます。
人材採用のための取り組みを、対お客さまに置き換えると、 『対策① ホームページやSNSによる情報発信の強化』は「プロモーション」、 『対策② 時給・労働条件の見直し』は「商品や価格の見直し」、 『対策③ 応募時のレスポンスと面接対応の見直し』は「予約対応と当日のおもてなし」です。
一緒に働いてくれるかもしれない方に対しても取り組むことが人出不足解消の第一歩です。
重要なことは、働いてくれるスタッフを大事にすること。
働き甲斐があり、良い環境の良い職場であればそのスタッフがお客さまを大切にし、友人や知人を連れてきてくれるはずです。