食品メーカーのカーボンニュートラルへの取り組み|TOHOBIZNEX

カーボンニュートラル・東海最前線 連載第9回


東邦ガスのCN×P

記事掲載日:2023/03/29

政府の2050年カーボンニュートラル目標が打ち出されて以来、 それに向けた戦略を発表する企業が増えています。日本経済新聞社がまとめた2022年の「SDGs経営調査」では、 カーボンニュートラルを宣言している企業が53.3%と、前年から約2割上昇したといいます。 ますます動きが加速するカーボンニュートラルについて、東海地方に事業所・工場を持つ食品メーカーはどんな取り組みをしているのかを紹介します。 (ライター南由美子/nameken)

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東海地方にある食品メーカーのカーボンニュートラルへの取り組み

工場や菜園の省エネ、再エネ導入、水資源保全など進めるカゴメ

名古屋市に本社を置き、トマトケチャップやウスターソースなど自然の恵みを原料に 商品を製造するカゴメ株式会社。自然環境の保全は事業継続のために必要不可欠とし、 特に気候変動への対応は優先度の高い課題と位置付けています。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言が公表されると、 カゴメは2019年に気候変動シナリオ分析を実施し、事業におけるリスク・機会を明確化。 指標と目標の見直しに着手し、TCFD提言への賛同を表明しました。

2020年には「CO2削減プロジェクト」を発足。工場や菜園での製法の見直しや 高効率設備への更新といった省エネ、太陽光やバイオマスなどによる再生可能エネルギー利用に取り組みます。 この結果、2021年度にCDP(企業などが自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システム)の 「気候変動」でも高い評価であるA-(Aマイナス)リストに選定されました。

2021年にはCO2排出削減目標を見直し、2050年までにグループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、 2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定しました。削減目標はパリ協定の「1.5℃水準」と整合させ、 スコープ1 およびスコープ2では2020 年度比で42%、スコープ3では2020年度比で13%としています。この新しい目標により SBT(パリ協定が求める水準と整合した、科学に基づく温室効果ガス排出削減目標)の認証を取得しました。

削減目標達成に向けてアメリカ、オーストラリア、日本の工場で太陽光発電の導入を進め、 2022年1月には国内外の2工場の消費電力を100%再生可能エネルギーでまかなっています。 工場から排出される熱やCO2を、隣接する菜園でトマト栽培に利用する取り組みも始めています。

また、農作物の栽培や加工で多くの水を使うことから、 水資源を守るために「カゴメグループ 水の方針」を策定。冬の間に工場で使用した水をダムに溜めておき、 春に近隣農家に提供するなどの取り組みが評価され、 CDPの水資源管理に関する企業調査「CDPウォーターセキュリティ2021」で最高位の Aリストに選定されました。

SBTネットゼロを世界の食品会社として初取得したキリンHD

愛知県に事業所と工場のあるキリンホールディングス株式会社は、 早くから温室効果ガス排出量削減に取り組み、 2009年には「1990年比で2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量を半減する」という目標を掲げました。

2018年には日本の食品会社として初めてTCFD提言への賛同を表明。 2020年には長期戦略「キリングループ環境ビジョン2050」を策定し、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー比率100%、 2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガスネットゼロを宣言しています。

2022年7月には、SBTが新たに設けた「SBTネットゼロ*」の認定を世界の食品会社として初めて取得。 パリ協定の「1.5℃水準」に基づき、温室効果ガス排出目標を2030年までに2019年比でスコープ1とスコープ2の合計で50%、 スコープ3で30%削減と設定しています。

さらに2022年12月には、CDPの「気候変動」「水セキュリティ」で最高評価のAリストを獲得しました。 同社は選定で評価された点として、先述のSBTの認定やTCFDが求める情報開示と戦略への反映のほか、 国内全ビール工場への大規模太陽光発電の導入、キリンビール名古屋工場・キリンビール仙台工場およびシャトー・メルシャンの 全ワイナリーで購入電力の再生可能エネルギー100%達成、紅茶飲料の主な原料産地であるスリランカの農園での水源地保全活動などを挙げています。

なお、同社はCDPの「気候変動」では4年連続、「水セキュリティ」では7年連続でAリストであり、 ダブルAを連続獲得している数少ない企業の一つです。

(*SBTネットゼロ:SBTイニシアチブが2021年10月に新しく設けた基準。企業の温室効果ガス排出削減目標が1.5℃水準と整合しているかを認定する)

生産活動と物流活動での省エネに努めるMizkan

愛知県半田市に本社を置く株式会社Mizkan(ミツカン)は、1804年の創業当初から水と深く関わってきた歴史を踏まえ、 1999年に「水の文化センター」を設立し社会貢献活動を行ってきました。山林の育成事業にも取り組み、生物多様性の保全やCO2の吸収源などに役立つことから、 「地球の健康と人のいのちを育むことにつなげていく」としています。

CO2排出削減では、エネルギー消費量の多い生産活動と物流活動で省エネルギー施策を推進しています。

生産活動では2021年から栃木工場で、県の水力発電所を利用した地産地消の電気メニューを採用。工場で使う電気の半分以上は、 CO2を排出しない水力発電でまかなえると想定しています。

物流活動では1996年度からパートナー企業との共同配送を実施し、これまでに日本国内面積の75%まで広がっています。

また2022年には、共同開発した開封しやすい段ボールが日本包装技術協会主催の「2022日本パッケージングコンテスト」で 輸送包装部門賞を受賞。カットテープの廃止と材質変更により、年間で開封作業時間は1,666時間、CO2排出量は78トンの削減効果があるとしています。

このほか、生産工程で生じる副産物や廃棄物、販売活動での返品などを有効活用し、廃棄物を限りなくゼロにすることや、 食品ロスの削減にも取り組んでいます。

次回は、
カーボンニュートラルを推進する補助金についてご紹介します。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

● カゴメ株式会社

TCFD提言への取り組み
https://www.kagome.co.jp/company/csr/environment/activity/tcfd/

地球温暖化への対応
https://www.kagome.co.jp/company/csr/environment/activity/globalwarming/

統合報告書2022
https://www.kagome.co.jp/library/company/ir/data/integratedreport/2022/pdf/2022_7.pdf

● キリンホールディングス株式会社

ニュースリリース
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/1213_02.html

ニュースリリース
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2021/1227_01.html

価値創造ストーリー
https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/model/stories/warming_210201.html

● 株式会社Mizkan

環境への取り組み
https://www.mizkan.co.jp/assets/pdf/company/csr2022.pdf

未来ビジョン宣言
https://www.mizkanholdings.com/ja/vision/environment/

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