自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針・その2|TOHOBIZNEX

カーボンニュートラル・東海最前線 連載第6回


東邦ガスのCN×P

記事掲載日:2023/01/24

カーボンニュートラルの実現に向けた自動車産業の動きを2回に分けて紹介します。 前回はメーカー各社の方針全般と電動化への動きをお伝えしました。今回は燃料開発とサプライチェーンへの要請をまとめます。(ライター南由美子/nameken)

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自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針・その2

自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針

水素や生物由来の新燃料開発が本格化

自動車メーカー各社は、電動車にシフトするとともに、新しい燃料の開発にも力を注いでいます。 電動車は走行中にはCO2を排出しませんが、電池の製造時や、走らせる電力をつくる時にはCO2が排出されるため、 再生可能エネルギーを活用したアプローチも必要という考えからです。

水素を燃焼させて動力を発生させる「水素エンジン」は、トヨタ自動車が開発に取り組んでいます。 2021年にはSUBARU(スバル)、ヤマハ発動機、川崎重工業などと協力し、水素エンジン車で24時間のカーレースを完走しました。

「合成燃料」は多くのメーカーが開発を進めており、水素を原料とする「e-Fuel」には トヨタ、本田技研工業(ホンダ)、マツダが取り組んでいます。これはCO2と水素を合成して製造する、「人工的な原油」とも言われるもの。 CO2を資源として利用するカーボンリサイクルに貢献するため、脱炭素燃料と考えられています。

生物由来のバイオ燃料には日産自動車、マツダなどが取り組んでいます。 そのうちマツダは、ユーグレナ社が製造したミドリムシの油脂と使用済み食用油を原料とした100%バイオ由来のディーゼル燃料を使い、2021年にカーレースに参戦しました。

求められる「ウェル・トゥ・ホイール」の視点

また、マツダは技術開発に関する長期ビジョンのなかで「Well-to-Wheel(ウェル・トゥ・ホイール)」という視点でCO2削減を進めるとしています。

「Well」は井戸の意味で、この場合は油田のこと。「Wheel」は車輪の意味で、自動車を表します。つまり、エネルギーを手に入れる段階から、 製造、輸送を経て実際に走行される段階まで、全体を通して自動車の環境負荷を問う考え方です。

たとえば電動車でも、外部から充電するBEV(バッテリー式電動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)は、 その電気がどうつくられたかがポイントになります。火力発電による電気であれば、トータルで見るとCO2を排出しています。水素を利用する場合も、水を電気分解して水素をつくったり、 補給ステーションまで車両で運搬したりする際にCO2を排出するのであれば、「Well-to-Wheel」視点からは環境価値が高いとは言えません。

これまで自動車の環境負荷の評価は「Tank-to-Wheel(タンク・トゥ・ホイール)」が基準でした。 タンクに燃料を入れてから、実際に走行させる段階までの性能のことです。

しかし、ヨーロッパで自動車の環境性能を評価する団体「Green NCAP」は今年、 評価基準を「Tank-to〜」から「Well to Wheel+」に大きく改定しました。エネルギー源の抽出、生産、流通に関わる温室効果ガス排出量が加味されることになったのです。 ただし、車両や電池の生産時の排出量は加味されていないため「+」が付けられました。

今後の自動車生産には「Well-to〜」の視点がより強く求められることになるでしょう。

Well-to-Wheel(燃料採掘から車両走行まで)

Well-to-Wheelの考え方(参考:経済産業省自動車新時代戦略会議資料)

取引先に協力を求め、サプライチェーン全体で取り組む

1台の自動車は、小さなネジまで数えると約3万個の部品からできていると言われます。 こうした部品の生産から車両の組み立て、輸送などには多様な企業が関わり、密接なサプライチェーンを築いています。 そのため、自動車業界のカーボンニュートラル実現にはサプライチェーン全体で取り組むことも不可欠です。

実際、自動車メーカーはサプライヤーにCO2排出量を減らすよう協力を求めており、 供給網全体にカーボンニュートラルの動きが広がりつつあります。CO2削減量が取引条件となるわけではないとしていますが、今後は取引先の選別につながる可能性もあります。 各社がサプライヤーに対してどのような要請をしているのかを表にまとめました。

  サプライヤーへのC02排出削減の要請
トヨタ 主要1次取引先に対し、2021年のCO2排出量の削減目標として、2020年よりも1ポイント厳しい、前年比3%減を要請
ホンダ 主要部品メーカーに対し、2025年度からCO2排出量を2019年度比で毎年4%ずつ減らし、50年に実質ゼロにするよう要請
日産 主要部品メーカーとCO2排出削減に向けた課題を共有する取り組みを開始
マツダ 協力企業とCO2排出削減に向けたロードマップを作成。具体的な削減比率は要請していない

一方、自動車の部品づくりの業界は9割以上が中小規模の企業で、なおかつ電動化の影響を受けやすい領域です。 このため、業界団体の日本自動車部品工業会は「各企業単独ではカーボンニュートラルの技術導入やコスト面での対応が困難」だとしています。 工業会では、セミナーや勉強会などを実施するとともに、国などによる支援も重視。その上で今年4月、 「2030年のCO2排出量について、2013年度比で46%以上の削減を目指す」と宣言する環境自主行動計画を示しました。

こうした中小メーカーに対し、官民が連携して脱炭素化をサポートする動きもあります。 東海エリアでは東海財務局と中部経済産業局が、トヨタや金融機関などをメンバーとする連絡会議を発足。 中小メーカーからの要望や相談を聞き取り、金融面や産業面で共に支援する姿勢を示しています。

課題は多くありますが、自動車産業は今後カーボンニュートラルを目指し、めまぐるしい変化を遂げていくことは間違いないでしょう。

次回は、
用語解説その1として「TCFD」や「CDP」について取り上げます。


東邦ガスのCN×P

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

マツダ株式会社 教えてマツダ
https://www.mazda.com/ja/careers/newgraduate/business/qa052/

経済産業省 資源エネルギー庁 「電気自動車(EV)」だけじゃない?「xEV」で自動車の新時代を考える
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/xev.html

経済産業省 資源エネルギー庁 次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso_tukurikata.html

日経クロステック 欧州の自動車環境試験、ウェル・トゥ・ホイールに改訂後初の評価
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13270/

一般社団法人日本機械学会 Well to WheelとLife Cycle Assessmentの意味するところ
https://www.jsme.or.jp/kaisi/1188-47/

経済産業省 自動車新時代戦略会議(第1回)資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/001_01_00.pdf

日刊工業新聞社 ニュースイッチ トヨタ・ホンダ・日産…製造から廃棄まで「脱炭素」、それぞれの試行錯誤
https://newswitch.jp/p/30293

一般社団法人日本自動車部品工業会 カーボンニュートラル実現に向けた課題と要望
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/carbon_neutral_car/pdf/004_05_00.pdf

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