自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針・その1|TOHOBIZNEX

カーボンニュートラル・東海最前線 連載第5回

記事掲載日:2023/01/11

東海地方の基幹産業である自動車産業。なかでも愛知県には世界的な自動車メーカーの本社をはじめ、 部品の生産や車両の組み立てといった多くの関連企業が立地します。日本経済にも大きな影響を及ぼす自動車メーカーでは、 カーボンニュートラル実現に向けてどのような取り組みをしているのでしょうか。2回に分けて紹介します。(ライター南由美子/nameken)

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自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針・その1

自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた方針

各社とも政府表明に合わせ、2050年のカーボンニュートラルを目指す

「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言した日本政府と足並みを揃え、 自動車メーカー各社は2050年を達成時期に見据え、カーボンニュートラルを目指しています。 ただし、その過程にはそれぞれに特徴が見えます。

トヨタ・電動車をフルラインナップ

まず、トヨタ自動車は1997年から累計1700万台以上の販売を通じて培ってきたHV(ハイブリッド車)技術を起点に、 PHV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー式電動車)、FCV(燃料電池車)といった電動車のフルラインナップを活用。 多くの選択肢から最適な電動車を提供し、カーボンニュートラル実現を目指すとしています。

具体的には、2050年に向けた目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を設定して、次の3つの「ゼロへのチャレンジ」に取り組んでいます。

  • 新車CO2ゼロチャレンジ

2050年には世界で販売する新車が排出するCO2を、2010年に比べて90%減らすことを目標に電動車を開発。

  • 工場CO2ゼロチャレンジ

工場で使う電気の量を少なくする。環境にやさしい方法でつくった電気を使って、工場から排出するCO2をゼロにする取り組みを進める。

  • ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ

車の走行時だけでなく、材料や部品の生産、車両の組み立て、メンテナンス、廃棄・リサイクル、車や部品の輸送などを含めて、CO2の排出量ゼロを目指す。

日産・2030年代には全新型車を電動化

日産自動車は「2050年までに事業活動を含む車のライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現するため、 2030年代早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とする」ことを目指しています。

それに向けて、以下の分野で電動化と生産技術のイノベーションを進めるとしています。

  • 全固体電池(注1)を含むバッテリー技術の革新
  • エネルギー効率を向上させた新しいe-POWER(注2)の開発
  • 再生可能エネルギーを活用したバッテリーエコシステムの開発
  • 「ニッサン インテリジェント ファクトリー」など車両組み立て時の生産効率を向上させるイノベーションの推進

(注1)安全面や充電1回当たりの走行距離の長さなどで注目を集める次世代電池。

(注2)ガソリンエンジンで発電し、その電力を利用してモーターの力だけで走行する、日産独自の電動駆動装置。

ホンダ・2040年までに「脱エンジン」宣言

本田技研工業は2050年に「全活動のCO2排出量を実質ゼロにする」と宣言。 すべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指すとしています。

その実現のため昨年、「2040年までにEVとFCVの販売比率を全世界で100%にする」と発表。 日本の自動車メーカーとして初めて「脱エンジン宣言」をしました。

その技術開発の核としているのが、エネルギーの「マルチパスウェイ(複数の経路)」です。 それぞれ強みや役割の異なる以下の3つのサイクルを軸に、カーボンニュートラル実現と再生可能エネルギー利用を促進するとしています。

  • 電気の循環(電気サイクル)…車やバイクは電気で動かす。
  • 水素の循環(水素サイクル)…より大きなエネルギーが必要トラックなどは水素で動かす。
  • カーボンの循環(カーボンサイクル)…さらに出力が必要な航空機などには、CO2を資源としたカーボンニュートラル燃料を活用する。

マツダ・車体の塗装やデザインでもCO2削減

マツダは「2050年までに、サプライチェーン全体での取り組みにより、車のライフサイクル全体でカーボンニュートラル化」を目標に掲げています。

そのため2030年には生産するすべての車に電動化技術を搭載予定で、 まず今年から2025年にかけて新たにHVモデル5車種、PHVモデル5車種、EVモデル3車種を順次導入し、2025年までに13の電動化モデルを導入予定です。

また、車体の製造やデザインでも、以下のような工夫でCO2削減を目指すとしています。

  • 製造

地球環境への配慮と高品質な仕上がりを両立したマツダ独自の水性塗装「アクアテック塗装(注3)」を採用。

  • デザイン

燃費とCO2排出量の両方を削減する空力設計。

(注3)シンナーなどの揮発性有機化合物の排出量を従来の油性塗装比78%削減。CO2排出量も15%以上削減

電動車シフトの途中目標

このほか、各社は自社工場のエネルギー利用の見直しも図っています。 マツダは「2035年までに省エネ技術の導入や再生可能エネルギー、脱炭素燃料の活用により自社工場でカーボンニュートラルを目指す」と発表。 自社工場でのカーボンニュートラルはトヨタも2035年に実現する方針です。

次回は、
カーボンニュートラル実現に向けた電動化や自社工場での取り組み以外の方針として、新しい燃料の開発とサプライチェーンに対する要請などをまとめます。


製品別のCO2排出量を見える化 GreenConnex(グリーンコネックス)

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

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参考

トヨタモビリティサービス カーボンニュートラルへの道
https://t-mobility-s.co.jp/file/special/63601/14665/carbon-neutral/index.html

トヨタ自動車株式会社公式企業サイト クルマこどもサイト 環境にやさしいクルマづくり
https://global.toyota/jp/kids/environmentally-friendly/challenge2050/

日産自動車株式会社 2050年カーボンニュートラル実現に向けて
https://www.nissan-global.com/JP/SUSTAINABILITY/ENVIRONMENT/CARBONNEUTRAL/

日産自動車ニュースルーム 長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/nissan-ambition-2030-vision-to-empower-mobility-beyond

本田技研工業株式会社 Honda Sustainability Report 2021「環境」
https://www.honda.co.jp/sustainability/report/pdf/2021/Honda-SR-2021-jp-051-076.pdf

本田技研工業株式会社 2050年、Hondaが目指している「カーボンニュートラル」って?
https://www.honda.co.jp/HondaHeart/special-contents/infographics/01/

本田技研工業株式会社 2021年4月23日ニュースリリース
https://www.honda.co.jp/news/2021/c210423.html

マツダ株式会社 環境
https://www.mazda.com/ja/innovation/environment/

マツダ株式会社 ニュースリリース2022.6.2
https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2022/202206/220602a.html

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 自動車産業を取り巻くカーボンニュートラル対応の動向
https://www.murc.jp/report/rc/report/consulting_report/cr_220118/

日刊工業新聞社 ニュースイッチ トヨタ・ホンダ・日産…製造から廃棄まで「脱炭素」、それぞれの試行錯誤
https://newswitch.jp/p/30293

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