製造業のカーボンニュートラル取り組み事例3選|TOHOBIZNEX

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製造業のカーボンニュートラル事例3選 製造業のカーボンニュートラル事例3選
【事例紹介】桜井興産株式会社さまのカーボンニュートラルへの取り組みについて

世界中の国と企業が2050年の実現を目指すカーボンニュートラル。日本でも2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比46%減、2050年までにゼロにするという削減目標を立てて全産業を挙げて取り組んでいます。

なかでも、その動向に注目が集まっているのが製造業。CO2排出量の割合が、全産業の約4割も占めるからです。
2050年という期限に向けて確実にカーボンニュートラル化を実現するには、いかに効率よく進めるかが重要となります。その参考にしていただけるよう、本記事では先行する製造業の取り組み事例を3つご紹介します。

製造業における効果的な取り組み 製造業における効果的な取り組み

カーボンニュートラル実現のためには、生産設備のエネルギー使用量をいかに抑えるかがカギとなります。
製造業でのエネルギー使用量のうち、多くが生産活動によるものだからです。

具体的な取り組みとしては、まず既存設備での生産活動におけるエネルギー消費量をチェックし、ロスを削減することで消費エネルギー量を抑制。そのうえで省エネルギーな生産設備や、再生可能エネルギーなどへ切り替えることが効果的とされています。
次からご紹介するのは、それらの取り組みを通じて成果を挙げている3社。「自社で取り組むとしたら」という視点でヒントを探ってみてください。

【事例1】10年でCO2を25%削減(タイヤメーカー) 【事例1】10年でCO2を25%削減(タイヤメーカー)

まずご紹介するのは、国内の大手タイヤメーカーグループの取り組みです。

同グループでは2050年のカーボンニュートラル化に向けて、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミー(循環型社会)※の実現と、それらをビジネスモデルと連動させる「サステナビリティビジネス構想」の実現に向けた取り組みに力を入れています。

※サーキュラーエコノミー=従来の「資源を採掘して、作って、捨てる」という経済システムのなかで廃棄されていた製品や原材料などを資源ととらえ、循環させる経済システムのこと。

そのなかで「CO₂排出量の最小化」に関して同グループでは、2023年までに2011年比で30%以上の削減を、2030年までに50%の削減を目標のひとつとして設定。

その実現に向けて主に「エネルギー効率の改善」と「社内カーボンプライシング(炭素の価格付け)※」、そして「再生可能エネルギーの導入」の3つに注力しています。

※社内カーボンプライシング=ビジネスの過程で排出する二酸化炭素の量に、企業が自主的に値付けを行うことです。

点

エネルギー効率の改善

生産拠点でのエネルギー効率の改善に積極的に取り組んでおり、グループ全体で年間のエネルギー効率0.5%を基準として総エネルギー消費量の削減を進めています。例として、高効率設備の導入やエネルギーロスの低減、エネルギーロスの見える化を図ることで省エネを推進。海外工場ではISO50001認証を取得し、エネルギーマネジメント強化にも注力しています。

点

社内カーボンプライシング

2011年に社内カーボンプライシングを導入。CO₂の排出量の低減や増加の影響を、省エネルギー設備や太陽光発電設備の導入など投資の判断基準に組み込み、カーボンニュートラル化に向けた社内意識の醸成と行動変容を促しています。

点

再生可能エネルギーの導入

2021年に欧州の全拠点、日本の4つの工場、中国の2つの工場で使用するすべての電力を再生可能エネルギーに切り替え。また、研究センターなど非生産拠点においても再生可能エネルギーの導入を進めています。

上記のような取り組みにより、同グループは2021年のCO₂排出量を2011年比で25%削減することに成功。2030年の50%削減へ向けて弾みをつけています。

【事例2】改善活動と技術革新で省エネ大賞(機械メーカー) 【事例2】改善活動と技術革新で省エネ大賞(機械メーカー)

次にご紹介するのは、国内の大手機械・部品メーカーの事例です。
主な取り組みは大きく分けて2つ。日々の「改善活動」と「生産技術の革新」です。

点

改善活動

同社では、2015年以降に日常の「改善活動」を強化。エネルギー使用量の見える化からスタートし、サイクルタイムの短縮、待機電力の削減、高効率設備の導入などを通して生産性向上と省エネを両立。具体的には、社長以下役員や他工場の責任者が各生産ラインを訪れ、責任者から説明を受けた改善活動について、その場で指摘や質疑応答を行うという活動をつづけています。

点

生産技術の革新

また、上記の取り組みと連動して同社の省エネ活動を支えているのが「生産技術の革新」。設計から製品の物流に至るまで、ムダをなくし効率を高める技術や設備を開発し、現場へ導入しているそうです。

以上のような生産性の向上と省エネが一体となった取り組みにより、同社ではエネルギー使用量を大幅に削減。そのプロセスや成果が評価され、同社は省エネ大賞を受賞。全社を挙げての省エネ努力がさらに加速しています。

【事例3】多角的な改善でCO₂を6.9%削減(飲料メーカー) 【事例3】多角的な改善でCO₂を6.9%削減(飲料メーカー)

最後にご紹介するのは、国内の大手飲料メーカーの活動です。

同社では、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出の実質ゼロを目指しています。また、中間目標として2030年までに自社拠点で50%、バリューチェーン全体で30%の排出削減という目標を掲げて多角的な取り組みを行っています。

点

省エネ技術や再生可能エネルギーの活用

例えば、同社工場では最新の省エネ技術を導入。国内のある工場ではコージェネレーションシステム※で得た電力を別の工場で使用する「電力託送」を実施しているほか、海外のテキーラ工場では蒸留工程の熱回収率を向上させる「貫流ボイラー」を採用。また、ほかの工場では大規模な太陽光発電パネルの設置や温室効果ガスの排出量が少ない都市ガスや液化天然ガスなどへの燃料転換も進めています。

※コージェネレーションシステム=天然ガス、石油、LPガス等を燃料とし、エンジン、タービン、燃料電池等の方式により発電し、生じる廃熱も同時に回収するシステムのこと。

点

CO₂排出量ゼロ工場

同社では、2021年5月から稼働を始めた主力商品を生産する工場において、太陽光発電パネルやバイオマス燃料を使用するボイラーの導入、再生可能エネルギーに由来する電力の調達などにより、同社として国内初のCO₂排出量実質ゼロ工場を実現。また、欧州や北米の複数の工場でもCO₂排出量ゼロを実現しています。

点

再生可能エネルギー由来の電力への切り替え

2022年4月には国内すべての自社生産研究拠点で購入する電力を、再生可能エネルギー由来のものに切り替え。この時点で日本、アメリカ、ヨーロッパの自社生産研究拠点で購入する電力のうち9割超が再エネ電力になりました。また、同社所有のホール、美術館においても再エネ由来の電力を活用しています。

このような取り組みの結果、2021年には同社が定める基準年と比較して自社拠点の温室効果ガスの排出量を6.9%、バリューチェーン全体においては5.6%を削減しています。

自社現状や風土に合わせて取り組みを 自社現状や風土に合わせて取り組みを

製造業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例を3つ、ご紹介してきました。

CO₂排出量やエネルギー使用量の見える化、作業工程の改善、省電力な生産設備の導入、再生可能エネルギーへの切り替えなど、2050年のカーボンニュートラル実現という目標は同じでも、そこへ向かうプロセスはさまざま。

持続可能なものにするためにも、自社に合う取り組みから始めることが重要です。

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