カーボンニュートラルとは?わかりやすく解説します。|TOHOBIZNEX

カーボンニュートラル・東海最前線 連載第1回

記事掲載日:2022/8/1

「カーボンニュートラル」や「脱炭素」の言葉を聞かない日はないほどの時代になりました。 しかし、今さら聞けない基礎知識や新しい専門用語はないでしょうか。それらを解説しながら東海地方の最前線の動きなどを全12回の連載でお届けします。 (ライター南由美子/nameken)

Q. 世界が今目指している「カーボンニュートラル」とは?

  • 温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。排出量から吸収量を差し引いた合計をゼロにすることです。

二酸化炭素以外の排出も削減。吸収強化も不可欠

カーボンニュートラルの言葉の意味は、カーボン(炭素)をニュートラル(中立)な状態にすること。 カーボンは主に二酸化炭素(CO2)のことを指しますが、削減すべき「温室効果ガス」はこれだけではありません。 二酸化炭素以外に、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスを含みます。 こうした地球温暖化に影響を及ぼすすべての温室効果ガスが削減対象になっています。

それらを「全体としてゼロにする」というのは、 温室効果ガスの「排出量」から「吸収量」を差し引いた合計をゼロにすること。 「実質ゼロ」にするという言い方や、正味(英語で「net」)ゼロにする「ネットゼロ」という用語もあります。

カーボンニュートラルを実現するためには、温室効果ガスをゼロにしなくてはなりませんが、 「排出」を完全になくすことは難しく、排出分のバランスを取るために「吸収」「除去」を行います。 つまり、温室効果ガスの排出量の削減と、吸収・除去作用の強化の両方が必要というわけです。

世界の流れを変えた「パリ協定」

世界がカーボンニュートラルを目指すことになった流れの根底には何があるのでしょうか。 近年の一番大きなきっかけは「パリ協定」です。

地球温暖化などの気候変動問題については、 1995年から始まった国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)で各国が協議してきました。

1997年には日本の京都で第3回の会議(COP3)が開かれ、先進国に温室効果ガスの排出削減を求める京都議定書が成立。 その目標の期限を越え、新たな長期目標を定めるために2015年、フランス・パリで21回目の会議(COP21)が開かれました。

中国やインドなどは経済成長とともに温室効果ガスの主要排出国となりましたが、 京都議定書では途上国扱いとなって削減義務が課されませんでした。 こうした状態に不公平感を募らせたアメリカは京都議定書を批准せず、目標の実効性が疑問視されていました。

それを踏まえて、パリ協定ではアメリカや中国、インドを含めたすべての参加国に2020年以降の 「温室効果ガス削減・抑制目標」を自主的に決めるよう求めました。パリ協定が「画期的」とされる理由の一つです。

そして、新たに以下の目標が定められました。

  • 世界的な平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

ただし、この「1.5℃」と温室効果ガス削減との関係について、当時はまだ科学的知見が不足していました。 そこで、世界の科学者が関わる国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」で評価がなされ、パリ協定後の2018年に具体的な関係性や数値が報告されました。

※ <図>世界平均気温の変化(1850~2020年・観測)

  出典)IPCC第6次評価報告書WG1/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

IPCC「特別報告書」で動きが加速

「1.5℃特別報告書」と呼ばれるその報告によれば、 世界の平均気温は工業化以前(1850〜1900年)と2017年を比べると約1℃上昇しています。 そして、そのままのペースで気温が上昇すると「2040年前後には1.5℃に達する」と予測されました。

気温上昇のリスクには、農作物の生産高減少や、極端な気象現象によるインフラ機能の停止などがあります。 ガスや電気、道路など社会インフラがダメージを受けると、事業活動や生活にも大きな損害が生じるでしょう。

1.5℃の気温上昇では、サンゴ礁が70〜90%減り、海面上昇や洪水・氾濫などのリスクが(2℃上昇するよりは低いけれど)大幅に高まります。 そうなると、生活環境が損なわれ、大規模な移住を余儀なくされることも予測されます。

そうした社会・経済活動にも影響する急激な温暖化をくい止めるためには、 「2050年前後に世界全体のCO2排出量を正味ゼロにし、CO2以外の温室効果ガスの排出も大幅に削減する必要がある」と報告書は指摘しました。 それを受けて、「2050年までにカーボンニュートラルの実現を」という世界の動きが加速していったのです。

次回は、
カーボンニュートラルに取り組むことで、企業にはどんなメリットがあるかを考えます。

≪ライタープロフィール≫
  • 南由美子(みなみ・ゆみこ)
  • 愛知県生まれ。飲料メーカーの販売促進、編集プロダクションでの制作を経て、フリーランスに。
  • 中日新聞折り込みの環境専門紙で「世界のエコ」をテーマにしたコーナーを2年半ほど担当。現在はウェブメディアなどで食・住を中心とした暮らしや環境をテーマに執筆。
  • 名古屋エリアのライターやカメラマンで作る一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」の会員。

参考

脱炭素ポータル カーボンニュートラルとは
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

経済産業省 資源エネルギー庁
今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html

経済産業省 資源エネルギー庁
「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html

東京大学未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所 江守正多
地球温暖化対策 なぜ1.5℃未満を目指すのか -IPCC特別報告書を読む
https://news.yahoo.co.jp/byline/emoriseita/20181104-00102886

地球環境戦略研究機関
「IPCC1.5℃特別報告書」ハンドブック
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/6693/IGES+IPCC+report_FINAL_20200408.pdf

WWF JAPAN
地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1028.html

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